陸前氣仙地方に於ける大工職出稼-3つの農民出稼の比較論-
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概要
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(1) 農民出稼としての氣仙大工は兼業農家の副農層を移動中核層となし, 3反から1町歩未滿の留守家族による自作農により高い移動性を有し下層貧農よりの移動を制約する出稼構造をもつ。<BR>(2) しかし一般に農家労力移動による賃労化形態は下層貧農層程より強く進行する傾向を示すが, 気仙大工を中心とするこれ等3つの出稼賃労化は必ずしもこの傾向に従わず, 寧ろ各給源村に於ける上層階層に高い移動面を示す。これは何れも技術的出稼であることに基因したが, しかし3つの出稼が各々固有な経済階層別移動傾向をとるのは技術修得に要する投下資本の大小に其の主因を求め得た。<BR>(3) 殊に氣仙大工及び経済的上層部よりの杜氏出稼は共の出稼の動因が高い技術なるが故であり, もはや出稼発生要因である自然的・経営的条件に基く出稼ではなく1つの文化的出稼と見倣される。<BR>(4) 殊に出稼発生形態及び成立形態より見た1, 2, 3, 段階の出稼タイプより, 一般に劣悪な自然的条件が経営の合理化によつて克服されても尚出稼を見る場合は, その高い特殊な技術或は伝統的習慣性によるものと見倣される。又一般農家の筋肉的出稼と云う場合は, 下層部酒造出稼の如く自然的条件及びこれに基く経営的要因に直接支配された出稼であり, 更に土地生産力が低く, 且つ零細農家になると, 下層部落漆かき出稼の如く山村畑作農村と云う自然的動因が最も強く其の前景に搬出されるのである。<BR>こゝに3つの農民出稼が各自の出稼構迭に於て自然を克服する人間生活の様相を段階を追つて示すことは興味深い。<BR>(5) 次に以上の結果より1, 2推測が可能である。即ち文化的出稼の要件である技術修得に要する投下資本は出稼の地盤である土地生産収盆と正比例的傾向を示すと云う一般法則性の存在を認めることが可能ではなかろうか。<BR>殊に岩手の農村はかくの如き出稼に必要な技術修得に対する迂廻資本投下能力の低調な土地生産制を有し, 反面自然的経営的要因による労力商品化の必要度は極めて高い。こゝに資本を必要としない一般筋肉的出稼の輩出をより多く見受けるに至つたものであろう。 (別の機会に詳論) 又今回は土地生産構造の面より技術的出稼の諸性格を吟味したが, これ等の特徴が逆にかゝるマージンの高い出稼収盆によつて漸次もたらされたものではなかろうか。 (例えば經濟階層の昇進等) これ等は別の機会に譲りたいと思う。
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