北海道西部におけるエゾシカの冬期の食性と積雪の影響
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概要
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北海道西部の多雪地域に生息するエゾシカCervus nippon yesoensisの冬期の食性を明らかにするために,2006年11月から2007月4月及び2007年11月から2008年4月までの2冬期間,越冬地において定期的に糞を採取し,その内容物を分析した.さらに,越冬地の積雪深を測定し,糞中の割合と積雪深との関係について解析した.糞分析の結果,無積雪期にはクマイザサ,イネ科草本などのグラミノイド,広葉草本類,落葉など多くの食物が利用されていたが,積雪後は内容物のほとんどがクマイザサ及び小枝・樹皮などの木本類の非同化部によって占められていた.越冬地の最大積雪深は2冬期間ともに100 cmを超え,2008年1月上旬には152 cmに達し,2007〜2008年における100 cm以上の積雪期間は約2ヶ月半に及んでいた.糞中に占める木本類の割合は積雪の増加とともに高くなり,積雪深が100 cm以上になると大半を占めるようになった.一方,クマイザサの割合は無雪期や積雪が増加した厳冬期には低く,初冬期や融雪期など積雪が中程度のときに最も多く利用されていた.以上のことから,多雪地で越冬するエゾシカの食性は,クマイザサと木本類が主要な餌となっているが,その割合は積雪深に大きく影響を受けており,積雪が増加してクマイザサの利用が制限される期間は,餌のほとんどを木本類に依存していることが明らかとなった.
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