乳質の成分的改善に関する調査研究
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概要
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我が国の酪農は、国際化の中で新たな選択を迫られている。産地間競争が激化するほど、乳牛を無視した乳質向上が強化され、生産病などの障害が続発的傾向を示し、酪農の不安条件となっている。現在起こっている問題、さらに今後予測される問題に対応するため、現在の乳質の状況を把握することが重要であった。その調査成績を要約すると次のとおりである。<BR>1)衛生的乳質に関する細菌・細胞数の平均値は、各月とも一定し、基準以下で推移した。細菌数は特に春夏期に生産者問のばらつきが大きく、細胞数との関連から、汚染乳の性質のものと考えられた。<BR>2)成分的乳質では、乳脂率は基準を上回ったが、夏期に著しく低下した。SNF率も夏期に著しく低下し基準を下回った。特にSNF成分の改善は乳脂率よりも技能的に困難であった。<BR>3)個人出荷乳の乳質を分類し、その分布状態をみると、A区34.1%、B区48.3%、C区2.2%、D区15.5%で、乳脂率のみ低下したものは17.7%、SNF率のみ低下したものは63.8%にも達し、改善の重要性が示唆された。<BR>4)乳質を支配している要因は、(1)牛の年齢・産次構成では、高乳質区は乳成分の高い若い世代層が多く、低乳質区は若い世代層が少なかった。(2)血統上の相違は、高質質上では遺伝的形質の高い種雄牛が供用されていたが、低乳質区では遺伝的形質のあまり高くない種雄牛が供用されていた。(3)月別の分娩率では、高乳質区は夏期の分娩率が高く、低乳質区は低かった。泌乳初期の乳成分は高いので、分娩率を調整することが、特に夏期では重要である。(4)給与飼料は乳質を左右する最大の要因である。高泌乳区は飼料計算で低乳質区に比し、DM・TDN・CP・P・Caの充足率は適正給与であったが、低乳質区は著しく過剰で濃厚飼料の過給が目立った。CF・ADF・NDF率の割合は両区とも量質を改善する必要があった。(5)綿実など、バイパス性の油脂や蛋白質の給与は、泌乳能力や泌乳期を考慮して給与すべきで、過剰給与は逆に乳質を低下させていた。<BR>5)乳質改善は経済性が伴わないと改善に意味がない。改善効果について能力と泌乳期別の3頭を選び試験を行なった。泌乳能力が高いほど、また泌乳期が初期ほど改善効果が高く、乳質も改善された。<BR>6)乳牛は高泌乳に向って改良されていくので、技術が伴わないと後天的に乳質に問題が生じ、高泌乳牛ほど生産障害も続発する可能性が高い。先天的には交配種雄牛の選択を考慮し、世代にわたり能力や乳質をチェックし、改善への資料とすべきである。
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