ガス状大気汚染物質のマウス肺 Peroxidative Metabolism への影響
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概要
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大気汚染物質の影響を測る指標としての肺の peroxidative metabolic pathway (PMP) の活性変化を評価する目的で, ガス状大気汚染物質の繰り返し暴露によるマウス肺の還元型 glutathione (GSH) 量及び glutathione peroxidase, glutathione reductase, 及び glucose-6-phosphate dehydrogenase 活性の変化を検討した。大気レベル濃度のオゾン又はオゾンより高濃度の二酸化窒素の暴露により, PMPの活性は暴露の強さに比例して上昇した。一酸化窒素, 二酸化硫黄, 又は一酸化炭素の暴露では, 大気レベルよりはるかに高濃度でもPMPの活性は変化しなかった。金属カドミウムフュームの吸入又はANTUの投与によってもPMPの活性は上昇したが, 肺重量当りの上昇率はオゾン又は二酸化窒素によるそれよりも小であった。これらのことは, PMPの活性上昇は, 酸化性の大気汚染物質の影響を示す特異的ではないが鋭敏な指標であることを示している。PMPへの作用はオゾンの方が二酸化窒素より10∼15倍強く, 又オゾンの作用はどんな低濃度でも存在し得るのに対し, 二酸化窒素のそれはある濃度以下では見られなかった。酵素活性の上昇度にも両者の作用の相異が見られた。PMPの活性と致死濃度のオゾン暴露に対する抵抗性との間に関連性が見られた。PMPは, オゾン等のオキシダントに対する肺の生体防御機構として重要な役割を果たしていると考えられる。GSH量の増加はオゾン又は二酸化窒素の暴露の強さとよく比例することから, GSH量の増加率を指標としてオゾンと二酸化窒素の複合影響を検討した。オゾンと二酸化窒素の混合暴露の影響は各々の単独暴露の影響の和に等しく, 両者の作用は相加的であると推定された。上記の指標を用いて, オゾンの作用に及ぼす二酸化硫黄, 一酸化窒素, 及び一酸化炭素の影響も検討した。二酸化硫黄はオゾンの作用を高める場合があり, 両者の相乗作用の可能性が指摘された。これらの知見は, オゾンを含む複雑な混合物より成る大気汚染による健康障害を, より明らかにするための手がかりを与えるものと考えられる。
- 日本衛生学会の論文