赤血球中水銀濃度における性,年齢差

概要

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赤血球中水銀濃度は,生体へのメチル水銀の曝露および蓄積量を示す恰好の生体指標である。今回の対象は,熊本県A町における健康診断の受診者で,成人1,253名(男511人,女742人)で,魚介類摂取量を考慮にいれて赤血球中水銀濃度と性,年齢との関連について検討を行った。結果は以下のごとくである。1.赤血球中水銀濃度は男女共に対数正規に近い分布を示した。赤血球中水銀濃度の幾何平均値は男で26.1ng/g(レンジ5.6∼71.4ng/g)女で18.8ng/g(レンジ3.7∼70.4ng/g)で,男が女より有意に高い値を示した。また,年齢が高くなるに従って赤血球中水銀濃度は低下した。2.赤血球中水銀濃度は魚介類摂取量の増加に従い有意に上昇した。また,男では飲酒者が有意に高く,女では体重の増加に従い上昇した。3.魚介類摂取量が一定の場合,赤血球中水銀濃度は女より男が高く,高齢者の方が低い値を示した。4.魚介類摂取量が等しいと答えた夫婦において,夫の赤血球中水銀濃度は妻より有意に高かった。以上,魚介類摂取量が一定の場合でも,赤血球中水銀濃度は女より男が高く,高齢者が低い値を示すことが示唆された。
日本衛生学会の論文