テレメータによるバレエ, アイス・スケートの回転姿勢の研究
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概要
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(目的): 従来, テレメータによる眼振の生理の研究は, 眼振のみの観察であった. 眼振は頭部に対する眼の動きであり, 眼振は空間における頭部の動きと同時に観察すべきであるとの見地から, 眼と頭の動きを同時に送信し得るテレメータを開発し, 随意運動時の眼と頭の動きを記録し, 随意運動時の眼振の発現様式を観察し, 随意運動時に前庭眼反射, 視性眼反射の演ずる役割を解明することを目的とした.<BR>(研究方法): 眼の動きと頭部の3軸に対する動きを送信し得る4現象テレメータを使い, 随意運動 (ヒトの普通の回転, バレエの回転, アイス・スケートのスビン) 時における眼と頭の動きを記録し, 分析検討した.<BR>(結果):<BR>1. ヒトのなにげない回転及び180度方向転換では多数の眼振が現われた. 号令下の “回れ右” の180度方向転換では1個の眼振が現われた. これらの眼振は迷路性, 視運動性の眼振であり, 急速相に始まり, 眼振様運動と呼ぶべき型であった. 何れも意志によって回転運動が眼の急速相からの動きから始まり, 回転中は迷路性, 視運動性におこる反射 (眼振) が動きを円滑にすすめる. 意志運動は反射運動により支持され回転運動は円滑に行なわれていた.<BR>2. トゥウル・シェエネで1回転1打の眼振が現われ, これはspottingといわれる技巧により意識的におこされた. ヒトの普通の回転中現われる多数の不規則な眼振はこのspottingにより抑制された. すなわち, 意志は反射をコントロールする.<BR>3. ピルエットの観察より, バレエの1回転1打の眼振はspottingと, この意志運動によりおこった前庭眼反射, 視性眼反射の合致した運動であることを認めた. すなわち, バレエにおける眼運動は意志と反射の合致した動きであった.<BR>4. 跳び上り空中で回転するという複雑なバレエの回転では, 回転中の前庭眼反射, 視性眼反射を意志的に統禦することが困難であった.<BR>5. バレエの回転において, 反射を意志でコントロールする能力は訓練により獲得された.<BR>6. バレエの回転における回転後眼振の抑制は視線の固定の影響が大であった.<BR>7. アイス・スケートのスピンにおける極めて規則正しい眼振は, 氷上の非常に速い回転であるのでretinal nystagmusが中心となり, それに迷路性の要素が加わったものと考えられた. この規則正しい眼振の発来及び頭部の身体正面への固定は, バレエの回転における眼運動, 頭部運動とは異ったものであった.<BR>8. アイス・スケートのスピンにおける規則正しい眼振の発来及び頭部の固定は訓練によって次第に獲得されるものであった.
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