上顎疾患におけるStrontium-85 scintigramの臨床的意義について
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概要
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1 緒言<BR>骨組織は常にbone remodelingを行なっているが, 一たび病的状態に遭遇するとその代謝の様態をかえ, その結果異常な骨吸収, 骨増殖がおこる. これをみる方法の一つとして骨の成分のradio isotopeを用いその集積状況を体外計測法により部位別に検討することができる.<BR>今回, 著者は<SUP>85</SUP>Srを用い種々の上顎疾患におけるそれの集積状況をphotoscintigramおよびcolorscintigramに記録した. 上顎骨各部位の様相を検索するとともに, エツクス線所見と対比し, 上顎洞疾患が周辺の骨組織へおよぼす影響を手がかりとして, 間接的に上顎疾患の診断に寄与しているか否かを検討した.<BR>2 研究対象<BR>対象は上顎癌13例を中心として, 上顎骨が何らかの影響を受けていると考えられる疾患の8症例および対照の2例の計23例である. 上顎癌13例の組織学的診断は扁平上皮癌9例, 未分化癌3例, 嚢胞状腺癌1例である.<BR>3 研究方法<BR>これらの対象に100μCiの<SUP>85</SUP>Srを経静脈的に投与した. 投与後48時間および7日で顔面の前面および患側側面につきscintiscanningを行い, photoscintigramおよびcolor scintigramを作製した.<BR>4 研究結果<BR>1) 上顎癌症例について<BR>上顎癌13例についてはエツクス線写真と対比して両者とも病的所見のみられるもの9例, 不一致なもの4例が観察され, <SUP>85</SUP>Sr scintisccannは有力な診断方法の一つであることが判明した. 上顎骨の部位別の検討を行い, とくに後壁の骨反応の所見がエックス線所見のそれに比べて比較的早期に正しく把握できることが確められた.<BR>2) 非上顎癌症例について<BR>非上顎癌症例8例につき検討し良性腫瘍例および炎症例において骨になんらかの病変がもたらされているものについてはこの方法によって病的所見が観察されることを明らかにした.<BR>3) 対照について<BR>上顎に疾患のない対照の2例については何ら病的所見がみられなかった.<BR>5結論<BR>従来の骨代謝の研究方法を文献的に検討し, <SUP>85</SUP>Sr scintiscannが骨代謝の研究上有意義であることを明らかにした.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文