日本語版62項目のToken Testの妥当性に関する量的および質的研究
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概要
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1.まず, 予備実験として, 失語症患者14名, 非失語脳損傷患者15名, および対照群18名 (神経症または神経症傾向のある入院患者12名と病院職員6名) について, De RenziとVignoloの原版を忠実に訳したToke Testを施行した.その結果, pass-fail scoresでもweighted scoresでも3群間に有意な得点差が認められた.しかし, 「青」と「緑」の混乱を招いたり, 要素の提示頻度に偏りがあることから, 日本人に合った改訂が必要と考えられた.<BR>2.つぎに, 本実験として, 「緑」を「黒」に, 「長方形」を「正方形」に変え, 要素の提示頻度を等しくするなどの改訂を加えたToken Testを失語症患者32名, 非失語脳損傷患者23名, および対照群20名 (神経症またはうつ状態の診断で入院中の患者12名と病院職員8名) に施行した.改訂したToken Testの妥当性, Token Test得点と年齢やIQとの関係, Token Testで生じた誤りの分析, Token Test得点と失語症鑑別検査の成績との関係などについて検討しつぎの結果を得た.<BR>1) Pass-fail scores, weighted scoresともに対象の3群間に有意差があった.両採点法を比較すると, pass-fail scoresの方が群間の差を検出するのに優れていた.<BR>2) Pass-fail scoresのcut-off scoreを対照群の最低点であった48とすると, 失語症群の93.8%が正しく分類され, 非失語脳損傷群の17.4%が失語症に分類された.全体では89.1%が正しく分類された.<BR>3) 対照群では, Token Test得点と年齢, IQの問に有意な相関はなかった.失語症群では, Token Test得点は年齢と負の相関があり, WAISのVIQならびにPIQとは正の相関があった.非失語脳損傷群では, Token Test得点と年齢との相関はなく, WAISのVIQと正の相関があった.<BR>4) Tokenの3属性についての誤りを分析したところ, 失語症群では形>色>大きさの順に誤り率が高かった.これに対し, 非失語脳損傷群と対照群は, これら3属性の誤り率は失語症群の大きさの誤り率よりも低く, 3つの間にあきらかな差はなかった.文法的誤り (統語的誤り) については, 失語症群が各項目で最も高い誤りの頻度を示したが, 3群の誤りのパタンには大きな違いはなかった.<BR>5) 失語症群では, Token Test得点と失語症鑑別検査の聴く過程, および話す過程の正答率との間に正の相関があった.<BR>以上の結果に基づいて, 日本語版62項目のToken Testの妥当性とToken Test得点を規定する要因について考察を加えた.
著者
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鳥居 方策
金沢医科大学神経科精神科
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平口 真理
金沢医科大学
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相野田 紀子
金沢医科大学
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平口 真理
金沢医科大学神経精神医学教室
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鳥居 方策
金沢医科大学神経精神医学教室
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榎戸 秀昭
金沢医科大学神経科精神科学教室
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榎戸 秀昭
金沢医科大学神経精神医学教室
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