石灰又はセメント凝結材としての本邦産岩石風化物に關する調査及試驗 (第1報) : 花崗岩風化物なる敲土に就て (愛知縣, 三重縣)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
愛知及び三重縣下の敲土に就て, 上記の調査試驗事項を要約すれば次の通りである.1. 敲土はその成因より〓雲砂と沈積砂とに分類し得る.〓爛砂は花崗岩の分布する地域に限つて賦存し, 沈積砂は第四紀更新層又は第三紀層の砂層及び礫層中に賦存する.2. 鑛物成分は石英, 長石, 雲母等であり之に長石, 雲母, 角閃石等の分解成生物を含み更に他系岩石の砂, 粒土を夾雜する場合がある.化學成分は珪酸70-80%, 礬土13-35%を主とし, 之に少量の酸化第二鐵, 石灰, 苦土, 加里及曹達等を含む.3. 色は淡色にして粘氣少く, 粘土分の甚しく多からざるものが良品と云はれてゐる.4. 愛知縣に於ては, 北部の山岳地帶及渥美灣沿岸の一部に雲爛砂を産し, 矢作川, 豐川流域に更新層に屬する沈積砂の産あり, 又知多郡, 名古屋市の東部及東北部に第三紀層の沈積砂があり無盡藏と推定されてゐる.三重縣に於ては, 主に第三紀層又は更新層の沈積砂を産し又雲爛砂は宇治山田市及び松阪市附近並に西部山岳地帶に賦存する.5. 敲きとは敲土に石灰を混合し少量の水を加へ混捏し之を充分に敲込みて緻密なる工作物となしたものを云ひ, 古來より井戸側, 流し, 水瓶, 土間床, 建築物の壁塗, 目地等に盛に使用された. 人造石とは敲土を結合材 (Cementing Material) とする割石の煉積工作物である. 人造石は河海の護岸, 擁壁, 橋臺用水の樋門等の土木工事に應用せられ又現在も地方的に用ひられてゐる.6. 敲きの配合は, 一般的用途のものには重量比にて石灰1: 敲土4-6程度のもので石灰量が多く, 人造石用のものは石灰1: 敲土8-15程度で石灰量が比較的小である.7. 敲きの硬化時間は石灰及敲土の性質, 其他の條件により異るが, 1週-3ヶ月程度であり頗る廣範圍に亙つてゐるが, 然し普通に1週間位で使用差支ひなき程度に硬化するものが最も多い.強度特に引張強さは材料の種類, 養生により種々であるが, 空氣中養生のものは1週間に7-16kg/cm2. 平均約13kg/cm2であり, 1年以上では強さが低下するものが多い.清水中養生のものは空氣中のものに較べて2-2.5倍程であり此場合は長期間に及ぶも強さの低下を來すことが殆んどない.海水中にては一旦強さが増加するが次第に侵蝕され長期間の存置に耐へぬものが多い.8. 敲きの石灰の代りにポルトランドセメントを用ひて比較すると空氣中及海水中ではセメントが勝り, 清水中では兩者同等或は石灰の方が勝つた結果を示すものもある.9. 敲きの缺點としては空氣中にて強さが低下すること, 耐鹹性の弱きこと, 風化による侵蝕を受け易く安定度の弱きこと等が擧げられる.更に施工法が煩雜なること, 其性質が産地により著しく相違すること等も併せて指摘される.10. 現在敲きの利用は未だ或る地方的範圍を出でない状態であるが, 其産地は殆んど全國的に亙り花崗岩の分布地帶及び其附近には必ず賦存し未だこれが充分なる調査は行はれず, 中には極めて良質な敲土が世上に知られざる状態にある.此意味より敲土は, 古來より我國獨特の重要なるセメント材料 (Cementing Material) であつたのみならず, 重要なる全國的資材であり, その施工法を改良しその利用を再興することは我國固有の施工法を再起活用することゝなり, 特にセメント不足に當面せる現下に於てセメント混合材又は雜用セメント類として研究利用の意味があらう.
論文 | ランダム
- 世界の水危機--ドナウ川の水質浄化と自然保護
- 水稲の無農薬・無化学肥料栽培の基本指標
- 第四のモビリティ革命 (特集 地域の安全・安心と活力を支えるモビリティ)
- 金融機関におけるインサイダー取引の未然防止
- 金融機関には厳格なインサイダー取引防止体制が求められる