薬品中の微量ヒ素の試験方法
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概要
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ヒ素の分析は元来この元素が人体に対して毒性を有することからしてとくにその微量の検出あるいは定量を必要とすることが多く,ために微量分析の方法についても古くから研究が行われており多数の報告がある.<BR>Marsh法<SUP>1)</SUP>,Bettendorff法<SUP>2)</SUP>,Gutzeit法<SUP>3)</SUP>などはその代表的なもので,一般に知られている方法であるが,なかでもGutzeit法はこれが発表されて以来多くの人々によって改良が加えられており,今日ではヒ素の微量分析法として最も多く利用されている.Gutzeit法は要するにヒ素化合物より発生機の水素によってヒ化水素を発生させ,これと重金属塩との呈色反応を利用するものであるがGutzeitが1879年に発表した方法は硝酸銀溶液でしめしたロ紙にヒ化水素を触れさせて呈する黄色の度合を比較するものであった.これより先,塩化第二水銀溶液が同じくヒ化水素によって着色することが報告<SUP>4)</SUP>されており,これをヒ素の微量分析に応用する提議がFlückiger<SUP>5)</SUP>によってなされた.ついで1907年Hefti<SUP>6)</SUP>によって塩化第二水銀溶液でしめしたロ紙を用いる方法の研究がなされ(Hefti法と称する),同年Sanger,Black<SUP>7)</SUP>は塩化第二水銀のアルコール溶液を細長いロ紙にしませて細い管に入れ,これにヒ化水素を通し着色した部分の長さを比較して定量を行った(Sanger法と称する).この頃Goode,Perkin<SUP>8)</SUP>によって塩化第二水銀のかわりに臭化第二水銀を使用する方法が提案された.これはSmith<SUP>9)</SUP>によって支持され,この臭化第二水銀法は米国の公式分析法として採用されるにいたった.<BR>このたび日本ソーダ工業会技術委員会がきめたヒ素試験方法は微量分析小委員会(構成メンバー20名)においてGutzeitの改良法について,現在これに準拠しているJIS<SUP>10)</SUP>,日本薬局方<SUP>11)</SUP>,衛生検査指針<SUP>12)</SUP>,アメリカ薬局方<SUP>13)</SUP>,Rosin<SUP>14)</SUP>,A.C.S.<SUP>15)</SUP>などの諸方法を参考として検討が加えられ決定を見たものである.その検討されたおもな点は装置の改良,実施上のおもな注意事項など,ならびに合成塩酸,ソーダ灰およびカセイソーダ中のヒ素試験方法である.<BR>日本ソーダ工業会,JIS試薬,日本薬局方など,の装置を挙げた.<BR>日本ソーダ工業会技術委員会がきめたヒ素試験方法について