分析化学者のための熱力学と反応速度論 I
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概要
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ある分析法を確立し,あるいは改良するためには,その系のいろいろな因子を変化させて,好ましい条件(平衡条件)を見いださねばならない.これは熱力学的には反応の前後における系の自由エネルギー変化が目的に沿うほどじゅうぶん大きいような条件を捜していることになるし,いいかえれば,着目している一つの化学種の化学ポテンシァルを,目的に沿うようにコントロールできる条件を探索していることになる.分析化学において溶液を取り扱う場合,各種の平衡定数を測定することが重要であるということは,それが以上のような意味から,分析法を考察するための基礎を与えるものであるためである.またさらに,自由エネルギー変化の内容をエンタルピー項,エントロピー項の寄与に分けて考察すれば,現象の理解はさらに深くなり,たとえば新しい試薬の設計などに有益であろう.<BR>一方,一つの反応の反応速度は多くの場合その反応にあずかる物質の量と関数関係にあるので,たとえば吸光度を測定して目的物質の量を測定するのと同じ意味で,反応速度を測定する意味がある.また熱力学では反応前後のエネルギー変化しかわからないが,速度論的な研究の結果,反応機構に関して知識が得られることが多い.これも速度論的研究の一つの意義であり,分析化学に用いられる多くの反応の機構が,次々と解明されることは望ましいことである.<BR>表題のような解説は以上のような意味で企画されたものと思うが,われわれの限られた知識では,完全でしかも網ら的な解説は望むべくもないので,その点をご了承のうえでお引き受けした.そこで以下稿を進めるにあたっても,われわれが考えたり,実験したりして経験のある事項に限定したので,その点お許しいただきたい.
- 社団法人 日本分析化学会の論文
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