1,1,1-トリフルオロ-4-(2-チエニル)-4-メルカプト-3-ブテン-2-オン(STTA)キレートを用いる逆抽出によるコバルト(II)とニッケル(II)の分離 : β-ジケトンのイオウ誘導体の分析化学への応用(第4報)
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概要
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1,1,1-トリフルオロ-4-(2-チエニル)-4-メルカプト-3-ブテン-2-オン(STTA)のシクロヘキサン溶液によるコバルト(II)とニッケル(II)の溶媒抽出を研究し,抽出結果をもとにして,逆抽出によりそれら金属を相互分離し,光度定量する新しい方法を開発した.pH5.5〜6.0に調節した試料溶液を10<SUP>-3</SUP><I>M</I> STTA有機溶液と振り混ぜると,コバルト(II)とニッケル(II)は迅速かつ定量的に抽出される.コバルト(II)とともに抽出されたニッケル(II)は,pH1.5の水溶液と振り混ぜると有機相から逆抽出され,コバルトはそのまま有機相に残る.このような処理ののち,有機相はコバルトの定量に用い,水相はふたたびpH5.5〜6.0に調節し,10<SUP>-3</SUP><I>M</I> STTA有機溶液と振り混ぜニッケル(II)を抽出した.続いて,Co(STTA)<SUB>3</SUB>とNi(STTA)<SUB>2</SUB>を含むおのおのの有機相をpH9.5〜10.5の緩衝溶液と振り混ぜると,過剰の試薬は大部分有機相から水相に移った.よって,コバルト-STTAとニッケル-STTAキレートのみが有機相中に存在する.有機相中の約10<SUP>-6</SUP><I>M</I>のニッケルとコバルトを,それぞれ試薬ブランクを対照にして370nmおよび450nmで吸光度を測定して定量できた.キレートのシクロヘキサン溶液の分子吸光係数(cm<SUP>2</SUP>×<I>l</I>/mol)はNi(STTA)<SUB>2</SUB>では3.5×10<SUP>4</SUP>(370nm)と1.0×10<SUP>4</SUP>(450nm),Co(STTA)<SUB>3</SUB>では,9.0×10<SUP>4</SUP>(370nm)と1.3×10<SUP>4</SUP>(450nm)である.シュウ酸,クエン酸,フェロシアンイオン,EDTAのようなアニオンが抽出を妨害した.本法により,分析試薬級塩化コバルトならびに金属コバルト中に混入している10<SUP>-6</SUP><I>M</I>程度のニッケルを定量することができた.
- 社団法人 日本分析化学会の論文
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