高等植物の重複受精前後における卵細胞のミトコンドリアとその核の動態について
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概要
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高等植物の胚嚢内の卵細胞ミトコンドリアとその核(核様体)の変異について,Pelargonium zonale (ゼラニウム)を材料として,大胞子形成から胚嚢形成, 更に重複受精前後を通じて,テクノビット-DAPI法と電子顕微鏡法,及びVIMPICS (video-intensified microscope photon counting system),画像三次元構築法を用いて調べた.胚嚢母細胞から減数分裂を経て大胞子が形成される過程において,これら生殖細胞内のミトコンドリアは均一の小さい球形の顆粒状(0.3μm)を示し,そのDNA 量は約0.3Mbp である.7 細胞8 核の胚嚢が形成され,次第に各細胞の特徴が明確になるにつれて,卵細胞のミトコンドリアのみがその形態を変化させ,小さいリング状,紐状になり,これらは胚嚢の成熟につれて体積を増し,開花期には太く長い棒状または半円,全円のリングが積み重なった構造,mt-complex を形成する.これは3 次元構築によると,直径7 〜10μm のカップを最大10 個積み重ねた形をしていた.1 個のmt-complex の全DNA 量を測定したところ337Mbp となり,これは大胞子細胞のそれの約1000 倍に相当した.次に,受精後接合子の第一分裂までのmt-complex の変動と分配を追跡したところ,核の融合が終了する頃から複層したmt-complex のリングは単リングになり,さらに細かく分断され,2 細胞期には両細胞に小さい棒状, リング状の沢山のミトコンドリアが分配される.個々のミトコンドリアDNA 量は3-4Mbp に減少していた.このような卵細胞ミトコンドリアとその核の,受精前後におけるdrasticな変異の意味について考察する.