単結晶氷の摩擦電気I
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概要
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2本の氷捧を不均等に摩擦する時, 温度の高い方が負に帯電するというのが定説とされていた.しかし, 著者達の先の実験 (志尾・孫野, 1968) において, 多結晶氷と単結晶氷を摩擦する時, 温度差に関係なく, 多結晶氷が正に帯電することがわかった.このことは氷のcharge carrierとして温度因子以外に結晶因子があることを暗示している.そこで, 今度は結晶面の相異による摩擦電気現象を注目して, 氷の単結晶の基底面とプリズム面を摩擦してみた.その結果, 次の現象がわかった.<BR>1) -10℃以下の寒冷温度領域において, 同じ結晶面どうしを摩擦すると暖かい方が負に帯電し, 定説と一致する.<BR>2) プリズム面を基底面と摩擦すると, 温度勾配の方向上無関係に常に正に帯電した.このことは, 結晶面の相異による効果が, 温度差の効果より強いことを示している.<BR>3) 異なった結晶面どうしを摩擦した場合, 初めは基底面が負に帯電するが, 数分間, 摩擦を経過すると符号を逆転した.これは, 基底面側の摩擦面だけが多結晶に再結晶することから考えられる.<BR>以上の実験事実を総合すると, 氷の摩擦電気で重要なのは単結晶・多結晶の差, 基底面とプリズム面の差, 温度勾配の順であり, 定説の温度勾配の影響は上の三つの因子の中で最も弱いことがわかった.
- 社団法人 日本雪氷学会の論文