両側下腿伸側の腫脹・疼痛を主要症状とした特発性後腹膜線維症の1症例
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概要
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後腹膜線維症のうち特発性のものは,比較的まれであり,本邦では50例程度報告されている.随伴症状としては発熱,腰背部痛が主症状である.今回我々は下腿伸側の疼痛・腫脹を主症状とした本症患者を経験した. 48才,女性.入院時,両側下腿伸側中央部に色素沈着を伴う腫脹・圧痛あり,血沈亢進CRP (+2), γグロブリン, α2グロブリン上昇を示した.当初慢性骨髄炎を疑い下腿生検を施行したが,皮下組織に血管周囲炎を認めたのみで脛骨には一次的な変化は認めなかつた.骨シンチ施行時に偶然,右無機能腎,左水腎症の所見が得られ,排泄性および逆行性腎盂造影にて両側水腎症,右尿管全域にわたる狭窄,左尿管のL3-L5での狭窄,両側尿管の内方偏位が認められ, CTにて大動脈周囲の軟部組織の増大が描出された.後腹膜生検,左尿管剥離術,左尿管腹腔内固定術を施行し,組織所見は,線維増殖が著明で慢性的非特異的炎症所見が認められた.術後プレドニソロン30mgより漸減療法にて両下腿炎症症状は消退,血沈CRPも正常化した.本症例は主要症状が下腿炎症所見であり,本症の臨床症状としては極めて珍しく,一側腎機能が維持されている時期に治療開始できた幸運な症例といえる.本症の病因として自己免疫説があるが,本症例もレイノー現象陽性,抗DNA抗体陽性,下腿の血管周囲炎像,ステロイド反応性はこれを支持する.
著者
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荻原 俊男
大阪大学医学部 第4内科
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熊原 雄一
大阪大学医学部・第四内科中央臨床検査部
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田淵 義勝
大阪大学医学部第四内科
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瀬戸 孝宏
大阪大学医学部第四内科
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福地 研一郎
大阪大学医学部第四内科
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中丸 治
中丸医院
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