慢性腎不全における血液凝固能の研究
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概要
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尿毒症における凝固能異常の機序を明らかにするために,保存期腎不全(N-HD) (n=31)および透析期腎不全(HD) (n=28)両群において種々の凝固関連示標を測定した.正常対照群と比較し, N-HDではAPTT,トロンボエラストグラフ(TEG)-r, -kが有意に短縮していた.またTEG-ma,フィブリノゲン(Fbg),第VII, VII, IX, XI因子活性,第VIII因子様抗原(VIIIAGN),高分子キニノゲン(HMWK), FDP, α2マクログロブリン, Clインヒビター(Cl INH),高分子フィブリノゲン複合体(HMWFC)が有意に増加していた.またエタノールゲル化試験(EG),連続希釈硫酸プロタミン試験(SDPS)の陽性率が高かつた. N-HDにおいてはHDと比較してもTEG-r, -kが短縮しており, Fbg, TEG-ma, VIIIAGN, Cl INH, FDPの増加が認められた. HDでは正常対照群に比しTEG-r, kが短縮し, Fbg,第VII, VIII, IX, XI因子活性, VIIIAGN, Cl INH, FDP, HMWFCの増加が認められた. EG, SDPSの陽性率も高かつた. 3群間にPT,第II, V, X, XII因子活性,血漿プレカリクレイン,アンチトロンピンIIIに関する有意差は認められなかつた.以上のことから尿毒症においては過凝固状態にあり,透析により部分的に改善する.この過凝固状態はHMWK, VIIIAGNの増加から判断し,血管内皮損傷により内因系凝固機序が活性化されたためではないかと考えられる.