健常者ならびに虚血性心疾患患者における運動負荷時のGベクトルの変化に関する研究
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概要
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Gベクトルは心室内での興奮伝播過程により影響されず,一次性T変化,二次性T変化の鑑別に有用な情報を与えるものと期待されている.本研究では従来計測が煩雑であつたGベクトルの臨床応用を可能にするため,コンピュータを用いた心電図データ処理システムを開発するとともに,このシステムを用いて運動負荷前後のGベクトルを計測することにより,心筋虚血に基づく一次性T変化の評価を試みた.対象は健常群28例,労作性狭心症群15例,陳旧性心筋硬塞群12例であり,半臥位自転車エルゴメータにより多段階負荷を行ない,修正フランク誘導を用いて負荷前後の空間平均QRSベクトル,空間平均Tベクトル, Gベクトルの変化を検討した.健常群では負荷により, QRSベクトル, Tベクトルとも大きさの減少とともに方向の変化を認めた. GベクトルはQRSベクトルに比しより大きく減少するとともに,その方向も左後上方に変移し,健常者でも負荷により一次性T変化が生じることが示唆された.労作性狭心症群では負荷により,健常群に比し有意に大きいTベクトル変化を認めたが, Gベクトルも大きく変化し,健常群に比しより強い一次性変化が生じたことが示唆された.心筋硬塞群では安静時からGベクトルの大きさの減少,方向の異常を認め,硬塞群におけるTベクトルの異常には心筋壊死による一次性T変化が関与しているものとおもわれた. Gベクトルの方向の変移は負荷により生じた虚血の部位,または壊死巣から遠ざかる傾向を認めたが,その傾向は下壁虚血〜下壁硬塞群において著明であつた.以上の結果より, Gベクトルの計測は心筋虚血の評価に有用な情報を堤供するものとおもわれた.
- 社団法人 日本内科学会の論文