不整脈発現機序にあずかる血漿遊離脂肪酸とカテコールアミンの意義について
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概要
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急性生心筋硬塞において不整脈の発現は本症の予後を左右する重大な合併症とされている.本症における不整脈の発現機序にかんしては,血中カテコールアミン(CA)分泌増加と高遊離脂肪酸血症の関与する可能性が指摘されている.血中CA分泌増加は脂肪組織よりの遊離脂肪酸(FFA)の遊出を促し高FFA血症を惹起する.そのため本症における不整脈発現機序にかんする両者の意義ならびに相互関係を明らかにすることは重要と考えられる.この観点から正常犬を使用して動物実験を行なつた. 1%ステアリン酸乳剤投与により高FFA血症を作製し,その心室細動閾値(VFT)におよぼす影響を観察した.ついで,エピネフリン(Ep)投与によるVFTならびに血漿FFA値の変動を観察するとともに,かかるEpによる両者の変動におよぼすニコチン酸前処置の影響も併せ観察した.その結果,つぎの成績が得られた. 1)脂肪酸乳剤投与による血中FFA値の増加に伴いVFTの低下がみられた. 2)Ep投与により血漿FFA値の上昇がみられた. VFTの変動は初期に一旦低下を示したのち上昇する二相性の反応パターンを呈した. 3)ニコチン酸前処置によりEp投与後の血漿FFA値の上昇は阻止されたが,これに伴いVFTの低下も明らかに抑制された.以上より,心筋硬塞の不整脈発現機序として,血中CA分泌増加に伴う高FFA血症の関与する可能性が指摘される.
- 社団法人 日本内科学会の論文