胃液分泌にかんする臨床的ならびに実験的研究特にCl-の変動を中心として
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
胃液内電解質の動態, 各電解質間の相互関係ならびに体液との関係についてCl-濃度を中心に検討し, 胃液内電解質代謝機序の解明を試みんとし, 臨床例302例, 動物実験 (イヌ) 65例の胃液ならびに血液をhistamine dihydrochloride刺激により採取し測定した. 血液Cl-濃度はhistamine刺激前後で有意の変動を示さず, 一方胃液Cl-濃度はhistamine投与量に比例して変動を示した. また刺激前胃液Cl-濃度と刺激後胃液Cl-濃度も比例して変動を示し, 刺激前Cl-濃度の高いものは刺激後も高い傾向を認めた. histamine刺激後Cl-最高反応値は十二指腸潰瘍が高く, 胃癌で最も低い傾向を認めた. また胃粘膜の萎縮の程度 (胃カメラ) により, 胃液Cl-濃度の推移をみると, 萎縮性胃炎高度のものでは胃液Cl-濃度も低い傾向にある. 胃液内各成分をCl-最高反応時値について検討すると, Cl-は酸度, 遊離塩酸度とほゞ同様の変動を示すのに対し, Na+は酸度, 遊離塩酸度と逆の変化をみる. 電解質の転送に関係があるといわれる各種薬物 (acetazolamide, chlorthalidone, prednisolone, spironolactone, ouabain, 水銀利尿薬) のCl-濃度に及ぼす影響を検討したが, 水銀利尿薬, chlorthalidone投与で血漿Cl-濃度は減少し, 胃液Cl-濃度はacetazolamide, ouabain, 水銀利尿薬投与で減少を認め, Cl--transportになんらかの影響を及ぼすことが推察できた.
- 社団法人 日本内科学会の論文