実験肝癌の発生と推移における宿主の免疫応答について―とくに自己抗体を中心に―
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概要
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担癌生体における免疫現象の解析を目的として,モルモットにdiethylnitrosoamine(DEN)の経口投与により実験肝癌を作成し,投与各時期について体液性抗体として抗肝細胞膜抗体(LMA),抗平滑筋抗体(SMA),抗核抗体(ANA),抗ミトコンドリア抗体(AMA),リウマチ因子(RF)を,細胞性免疫としては末梢血リンパ球数,PHA-P皮内テストを検索し,かつClq結合活性値を測定した.その結果,体液性抗体についてはLMA, RFは非癌例に比べ担癌例で有意に高く検出されたが(p<0.05, p<0.01), SMAでは両群に有意差はみられなかった.ANAはいずれの時期にも検出されず,AMAは発癌前期および発癌早期に低い頻度に検出されたにすぎなかった.さらに,LMAは発癌後期に比し早期の方が出現頻度は高く,Clq結合活性値はLMAないしはRF陽性例で有意に高かった(p<0.05, p<0.02).細胞性免疫については,末梢血リンパ球の比率および絶対数は担癌の有無,発癌の時期とは関連がなく,DEN投与前に比べ投与以後いずれの時期でも増加を示した.また,PHA-P皮内テストについてはDEN投与3,4ヵ月目の一時期で有意な低下を示したのみで(p<0.01, p<0.02),担癌の有無,発癌の時期とは関連がなかった.以上のことから,DEN実験肝癌で癌発生により担癌生体に何らかの免疫応答が発生し,これら応答状態が癌の増殖にかかわり合いがあることがうかがわれた.
- 社団法人 日本肝臓学会の論文
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