320列CTによる維持血液透析導入初期の冠動脈スクリーニング
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概要
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当院に外来通院していた透析歴2年未満の血液透析患者全61名のうち,80歳以上の6名,心臓カテーテル検査による冠動脈造影(CAG)をすでに受けていた10名,CT撮影の同意が得られなかった13名を除く,32名(年齢59.2±12.7歳,透析期間12.6±7.3か月)に,320列CTを撮影して冠動脈狭窄の有無を調べた.撮影できた32名と,同意が得られず撮影できなかった13名の平均年齢や糖尿病の有無に有意差はなかった.32名にCT撮影した結果,6名が冠動脈狭窄あり,20名が冠動脈狭窄なしと判定され,6名は判定不能(高度石灰化5名,描出不良1名)だった.平均年齢は,冠動脈狭窄あり(67.3±9.5歳)や判定不能例(68.3±9.7歳)がそれぞれ,冠動脈狭窄なし(54.0±11.8歳)より有意に高齢だった(p<0.05,p<0.01).判定不能例の石灰化スコア(1088±907)は,冠動脈狭窄あり(351±356)や冠動脈狭窄なし(100±217)よりそれぞれ有意に高値だった(p<0.05,p<0.01).糖尿病は冠動脈狭窄ありの6名中4名(67%)にあり,冠動脈狭窄なしの20名中5名(25%)より多かったが,有意差ではなかった.CTで冠動脈狭窄がみられた6名にCAGを行ったところ,5名に治療が必要な有意狭窄を認め,1名は冠動脈バイパス手術,2名は経皮的冠動脈形成術(PCI),2名は薬物治療を実施した.CTで判定不能だった6名のうち5名にCAGを行ったところ,1名に冠動脈有意狭窄を認めPCIを実施した.CTによる冠動脈スクリーニングをきっかけにCAGを行い,初期血液透析患者32名中6名(19%)に治療が必要な冠動脈疾患を見つけ出すことができた.320列CTによる冠動脈スクリーニングは,未治療で潜在している冠動脈狭窄をみつけられるので,維持透析導入初期の患者に有用である.
著者
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櫻井 俊平
慈泉会相澤病院 臨床検査センター
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白鳥 勝子
慈泉会相澤病院 透析・腎不全センター看護科
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鈴木 智裕
慈泉会相澤病院 臨床研修センター
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小口 和浩
慈泉会相澤病院 放射線画像診断センター
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櫻井 俊平
慈泉会相澤病院 放射線画像診断センター
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小口 智雅
慈泉会相澤病院腎臓内科
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南 聡
慈泉会相澤病院腎臓内科
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羽田 健紀
慈泉会相澤病院循環器内科
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加藤 太門
慈泉会相澤病院循環器内科
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