ケロイド術後電子線照射の至適照射方法の検討 : ―1回照射量2Gyと3Gyの比較―
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概要
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ケロイドは良性疾患でありながら,その外観上から美容的,心理的のみならず,疼痛や掻痒感,拘縮感といった肉体的苦痛が常に患者を悩ます.ケロイド切除後の放射線照射は,ケロイド再発予防に有効であるが,いまだ至適照射方法の一定した見解がないのが現状である.放射線治療において時間的線量配分の異なる治療法の効果を比較する方法として,時間的線量配分time dose fractionation factor (TDF)を考慮し,さらに,生物学的実効線量biologically effective dose (BED) を用い,分割方法が異なる放射線治療の線量の標準化を行った.われわれは,十分なインフォームドコンセントの上,手術後電子線照射を行ってきた.胸部・腹部・肩・上腕・恥骨部等の高張力部に対しては,1994年から2005年までは4MeV電子線を1回2Gy,週5回で計10回(総線量20Gy,BED 24Gy,TDF 32.2)照射していたが, 2005年からは4MeV電子線を1回3Gy,週5回で,計5〜8回(総線量15Gy〜24Gy:平均20.05 Gy,BED 19.5Gy〜31.2Gy:平均26.2Gy,TDF 30.1〜48.1:平均40.20)照射している.耳介・耳垂等の低張力部に対しては1回2Gyを週5回,計8回照射(総線量16Gy,BED 19.2 Gy,TDF 25.8)から1回3Gyを4回照射(総線量12Gy,BED 15.6Gy,TDF 24.1)に変更している.最低6か月以上経過観察し得た1回照射量2Gy 群27部位と,1回照射量3Gy群25部位との再発率を比較検討した.高張力部位に関しては2Gy 群と3Gy群間において,再発率に有意差は認められず,治療効果が総線量あるいは生物学的実効線量に依存することが示唆された.低張力部位に関しては,総線量を減量した結果,再発率の増加は認められず,総照射線量としては12Gyで十分であると考えられたが,TDFの観点から見ると,2Gy群(TDF 25.8)と3Gy群(TDF 24.1)の間でほぼ同等の時間的線量配分が得られたことに起因しているとも考えられた.至適照射方法とは,再発と合併症をできるだけ少なくできる線量のことであり,更なる症例数の蓄積と長期にわたる経過観察の上,ケロイドに対する至適照射方法を検討していきたい.
- 昭和大学・昭和医学会の論文
著者
-
保阪 善昭
昭和大学医学部形成外科学教室
-
保阪 善昭
昭和大学医学部形成外科
-
安倍 徳寿
昭和大学横浜市北部病院形成外科
-
蓮見 俊彰
船橋中央病院形成外科
-
蓮見 俊彰
船僑中央病院形成外科
-
蓮見 俊彰
社会保険船橋中央病院形成外科
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蓮見 俊彰
昭和大学医学部形成外科学教室
-
安倍 徳寿
昭和大学医学部形成外科学教室
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