真珠腫コレステリン結晶の各種検査所見
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
目的真珠腫性中耳炎の診断法の一つとしてコレステリン結晶の耳漏内検出があり,従来一般光学顕微鏡によるコレステリン結晶の検出が行なわれているが,実際には検出困難な場合が多い,そこで(1)偏光顕微鏡,(2)光学顕微鏡,(3)電子顕微鏡,(4)X線回折により真珠腫性中耳炎患者より手術時に摘出したMatrix内のコレステリン結晶を観察し,臨床的応用について検討したので報告する.2. 方法材料は真珠腫性中耳炎13耳より摘出した真珠腫のコレステリン結晶を用いた.採取部位は固有鼓室4例,上鼓室3例,乳突洞4例,乳突蜂巣2例,である.観察方法は(1)偏光顕微鏡による方法:偏光装置付顕微鏡を使用し,100倍〜400倍で観察,(2)光学顕微鏡による方法:真珠腫を,(a)無染色,(b)H.E.染色,(c)脂肪染色,(d)Masson Trichrom染色,を行った後観察した.(3)電子顕微鏡による方法:採取した真珠腫の標本をリン酸緩衝液で洗浄した後,0.1%オスミツク酸で固定,次にアルコールにより脱水,QY1に通し,EPN812で包埋,ウルトラミクロトームを使用し,ガラスナイフにて超薄切片を作り鉛染色をほどこし,JEM-T5型電子顕微鏡で10,000倍で観察,撮影した.なお対照実験として1%ゼラチン包埋したコレステリン結晶を同方法により観察した.(4)X線回折法:採取した真珠腫と純粋なコレステリン結晶のX線回折を行ない比較した.成績:偏光検鏡した13例すべてに大小種々の板状薙形ないし菱形のあざやかな青色および橙色の結晶が認められた.しかしコレステリン結晶の大きさは一定せず,あるいは配列の層状のものや,散在性のものなどがあつたが採取部位による結晶の形態上のちがいは認められなかつた.次に偏光顕微鏡によりコレステリン結晶の存在を確認してから種々の染色染光学顕微鏡により観察した.しかしこの方法ではコレステリン結晶を認めることが出来なかつた.次に電子顕微鏡では角化層,顆粒層,有棘層に黒い斑点像を認めた、そしてゼラチン内に包埋したコレステリン結晶の同観察法においても岡じ黒斑像が得られた.X線回折においては真珠腫のコレステリン結晶と純粋コレステリン結晶とも一致するX線回折曲線を得た.3. 結論(1)偏光顕微鏡によればコレステリン結晶は青色および橙色の矩形ないし菱彩の結晶として容易にみとめられる.この方法は操作の容易さと高い検出率から臨床的方法として充分利用する価値がある.(2)染色法による組織標本の光学顕微鏡検査はコレスリテン結晶検出法としては不適であると考えられる.(3)電子顕微鏡によればコレステリン結晶は黒斑像として写しだされるものと考えられる.(4)電子顕微鏡およびX線回折法は真珠腫性中耳炎の微量のコレステリン結晶の検出に,また組織学的研究に利用すべき方法と考える.
論文 | ランダム
- 頭部エックス線規格写真による下顎枝矢状分割法の術後形態変化に関する検討
- コンピューターシステムによる顎変形症の診断, 手術計画, 術後形態予測に関する研究
- コンピューターによる手術計画のもとに施行した顎形成術の経験 : 小下顎症症例
- 多変量解析による顎変形症の診断, 術式選択, 予後予測に関する計量的アプローチ
- 下顎骨骨折後の骨シンチグラフィによる検討