両側第VIII神経腫瘍症例(Von Recklinghausen氏病)の蝸牛電気反応による診断学的検討
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概要
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目的:第VIII神経腫瘍症例より得る蝸牛電気反応の知見及びそれによる他覚的診断の意義を追求する目的で本実験を行なつた.実験法:両側第VIII神経腫瘍の存在を確認されたVon Recklinghausen氏病症例から我々の従来行なつているコンピュータの加算平均法を応用する電気生理学的手法を用い,鼓室内より蝸牛マイクロフォニックス(CM),及び蝸牛神経活動電位(AP)を記録した.CMは純音(250Hz.500Hz.1150Hz)に対し,APはクリック(中心周波数4000Hz)に対しての反応を記録した.更にクリック列(Trains of Clicks)を音刺激に用いAPのAdaptationの観察を試みた.結果:症例の左耳では,CMほゞ正常,AP反応電位低下(我々の分類によるII型の特性曲線),右耳では,CM.AP共に著明な反応電位低下(APはIII型の特性曲線)を認めた.この成績から以下の如く推論した.第III神経障害の軽度の時期(初期)には,AP反応電位低下,CM反応正常の所見を呈すが,病変が進行し高度になるし逆行性に蝸牛障害を生じ,CM.AP共に反応電位の低下を来すものと考える.結論として第VIII神経腫瘍の初期には,CM.APの記録による他覚的診断価値は大である事が上記の事実により,又理論的にも推定できる.更に蝸牛障害の有無を知る事は,病変の程度,予後の判定にとり大事であるが,この点でも電気生理学的検査の意義は大であると云える.クリック列刺激に対すAP反応の記録観察では,明らかに正常耳とは異なるAP反応振幅の減衰過程を認め,又反応振幅が平衡状態に達すのに正常耳に比し長い時間がかかるのを認めた.このAPの異常順応現象の意味するもの及び聴覚心理学的分野における異常順応現象(TTS.TTD)との関連は現在不明であり今後検討すべき問題である.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
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