マリアナ海溝におけるオフィオライトをともなつたアクリーション
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概要
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マリアナ弧の前線斜面および海溝域のエア, ガンによる音波探査とドレッジによる底質採取を東京大学海洋研究所所属の白鳳丸 KH-71-1 次航海で1971年2月の数目間に実施した。<BR>マリアナ諸島は始新世初期以降の安山岩および玄武岩質の火山岩と石灰質堆積岩から成っている。マリアナ弧前線の大陸斜面には最大層厚1秒 (往復反射時間) の堆積層が分布している (Figs.2, 3, 4) 。陸側海溝斜面には音響無反射層の堆積物と思われるものが分布している。<BR>大陸斜面の堆積物は海溝斜面縁にみられる音響基盤の高まりによつてさえぎられている。これら堆積物は側方堆積の傾向をもち, 基盤の構造運動による影響もみられる。海溝斜面縁の高まりは調査海域北方では約800mの比高があるが, 南域にいくにしたがい, しだいに低くなり, 最南域では地形上の高まりとしては識別できず, 堆積物をさえぎる基盤の高まりと斜面の傾斜の変換点としてのみ表われている。同様の基盤の高まりは海洋斜面縁の高まりの陸側にもう一つみられる。<BR>海側海溝斜面にみられる音響透明層はアンチセーティツク断層により切られている。また斜面にみられる海山は頂面に反射層らしきパターンがみられ, これは斜面と同様の傾斜面となつていることから, 斜面形成以前に平頂海山であつた可能性が強く, 太平洋プレートのマリアナ海溝への移動にともない傾斜したものと思われる。<BR>Fig.3の本調査測線上の大陸斜面に DSDP の site 60 の掘削点が380m深まであるが, その結果, 中期中新世の初期から末期にわたる凝灰岩層から成つていることが判明している。堆積層は音波探査の結果600-800mの層厚があるものと推定される。したがつて, これら堆積層はグアム島の Umatac 層に, また下位層の一部は Alutom 層に対比されるものと思われる。音響基盤の地質時代は判然としないが, 一部は Alutom 層に対比される可能性も否定できない。<BR>海溝斜面縁の高まりの海側斜面におけるドレツジから数多くの変質した蛇紋岩が採取された。これらの蛇紋岩には蛇紋石, 褐色クローム, olivine, augite, plagioclase, クローム, スピネル, opaque mineral 等が含まれている。また凝灰質堆積物, 有孔虫等が亀裂の中に含まれている。音波探査記録 (profile 1) にょるとドレツジ点には堆積層の反射面はみられない。したがつて, 凝灰質堆積物は蛇紋岩体が隆起したときにもまれ, とり込またものの一部であると判断される。<BR>マリアナ弧の地背斜域には中生界・古生界がみられない。たとえそれらが存在したとしても, 現在の状態のなかでの島弧活動は始新世後期以降であることが地背斜域の火山活動から推し計られる。海溝斜面縁の蛇紋岩は海溝の形成にともなうアクリーシヨンによつて陸側海溝斜面に沿つて隆起してきたものと思われる。海溝斜面縁付近の堆積層の分布形態から, その発展形態を判断することができる (Fig.8) 。
- 社団法人 東京地学協会の論文
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