武蔵野台地の水文地質
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概要
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1. 水文地質構造に関して<BR>1) 多数の深井戸資料を整理し, 地質層序の法則性にもとついて当地域の帯水層を区分すると大きく8層が識別される。これを下位のものからA<SUB>1</SUB> A<SUB>2</SUB>…A<SUB>8</SUB>層とした。<BR>2) 各帯水層の下底面はいちじるしい起伏を示すが, そこにみる谷状部はいずれも武蔵野台地の北東部に向かつてゆるく傾斜しながら続いている。<BR>3) おのおのの帯水層の分布の西〜南限をみるとより上位の層準の帯水層を内側 (北東側) とした弧状の配列をなしている。<BR>4) これらのことから対象としている帯水層の層準が地域によつて異なつていることが明らかとなつた。同時にこれらの吟味を経ないで上流地域の揚水が下流地域に影響すると即断するのは危険であることが示された。<BR>2. 地下水の賦存機構に関して<BR>1) 地下水面は上述の帯水層の構造とよく一致しており, 全体として地域の西部では東方へ, 東部では北東方向へ傾斜している。その他の細部の形状も地質構造の特徴をよく表現していることが示された。<BR>2) 地下水位の年間変動の特徴と帯水層の層準ごとの関係, およびその地域性が明らかとなつた。<BR>3) 透水量係数, ならびに比湧出量と帯水層の層準との関係はさほど顕著ではないが, 一部の例外をのぞいて, A<SUB>5</SUB>層以上のものがA<SUB>4</SUB>層以下のものにくらべて大きいといえる。しかし両者とも地質構造との閥係はかなり明瞭で, 各帯水層の下底部の谷状部にあたる地域が大きい。<BR>3. 地下水の滴養機構に関して<BR>1) 武蔵野地域の被圧地下水のおもな滴養源は河川と本地域の自由地下水である。<BR>2) 河水の浸透によつて涵養されている地域は昭島市から府中市にいたる多摩川沿岸地域であつて, 実測の結果酒養量は少なくとも1.5〜2m3/secはあるものと推定された。<BR>3) 自由地下水と被圧地下水が密接に連絡している事実は, 自由地下水の水位変動に如実に示されている。すなわち年間における自由地下水の最高と最低の水位差は, 各帯水層の分布の限界付近に大きく, この地域から涵養されていることを物語つている。その他深井戸の揚水による影響が自由地下水の日変化に明瞭にあらわれている例がみとめられた。<BR>4) 被圧地下水の涵養量は地下水の揚水量の増減とともにほぼ比例的に変化し, 両者の関係はきわめて密接である。<BR>この場合涵養量は揚水量の70〜80%に達するものと推定される。
- 社団法人 東京地学協会の論文
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