大腸癌の発生・進展に関わる遺伝子の異常
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概要
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1980年代に入り癌遺伝子が次々と単離され、癌細胞における癌遺伝子の活性化機構が解明されるに及んで、癌化の分子生物学的メカニズムが完全に明かにされるのではと期待された。RAS遺伝子の点変異、MYC遺伝子に代表される染色体の転座あるいは遺伝子の増幅によるコピー数の増加など、・癌遺伝子の質的・量的変化が発癌の重要な一因であることは確実であるが、これら攻撃因子の活性化だけでなく、最近では癌化に対する防御因子である癌抑制遺伝子の活性消失が発癌の主要な因子として注目を浴びつつある。癌抑制遺伝子という概念は綱膜芽細胞腫やWilms腫瘍などの遺伝性の小児腫瘍の発生に関与する特別な遺伝子ではないかと、当初考えられていたがRFLPマーカーとよばれるDNAマーカーの数の増加に伴って 般癌における染色体の欠失が次々と同定されるようになり、大腸癌をはじめ、乳癌・肺癌・腎癌においても癌抑制遺伝子の欠失が癌化の過程で重要な要因であることが確認されるに至った。大腸癌は一般癌のうちで最も癌化に関する遺伝子異常の研究が進んでいる癌であり、癌遺伝子ではRAS遺伝子、癌抑制遺伝子としてAPC遺伝子・MCC遺伝子・p53遺伝子・DCC遺伝子の異常が発癌に深く関与することが明かにされている。このうち、APC遺伝子は常染色体性優性遺伝性疾患である家族性大腸ポリポーシス症の原因遺伝子であることもわれわれは証明した。さらに、それぞれの遺伝子が正常粘膜→腺腫→大腸癌のどのステップに重要な役割を果たしているかも明らかになってきている。まず、APC遺伝子の異常が起きると腺腫が生ずる。これにRAS遺伝子の点変異が加わると腺腫は大きくなり、しかも異型性を増す。さらに、p53遺伝子やMCC遺伝子の異常が起きると癌へ変化し、DCC遺伝子などの異常が加わると転移しやすくなるものと推測される。このように、遺伝子の異常が蓄積されるに従って1段階ずつ悪性度を増していくものと考えられる。大腸癌のみならず、他の癌においても複数の癌遺伝子や癌抑制遺伝子が発癌過程に関与することも明らかになってきており、その点についても紹介したい。
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