Communication box法によるラットの急性実験潰瘍 実験条件の設定,内視鏡的観察,および迷走神経切離術の影響
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概要
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本研究は,条件情動反応の種族内伝播を利用して心理的情動ストレスを負荷させることが可能なコミュニケーションボックス法をラットへ適用し,急性実験潰瘍モデルの作成を試み,その特性を検討したものである.その際に,細径ファイパースコープを用いて,従来,小動物では報告の少ない胃粘膜病変の時間的推移を内視鏡的に観察した.また,胃粘膜障害(GML)発生に対する自律神経系の関与を検討する目的で,幹迷走神経切離術の影響を調べた.その結果,ラットの場合は,マウスと異なり,コミュニケーションボックス内で12時間情動ストレスを負荷しても,物理的情動ストレス群(E群)の38%に点状GMLが,心理的情動ストレス群(NE群)では13%に点状GMLが認められたのみで,GML発生率は低かった.そこで,単独ではGMLを誘発しない用量(1mg/kg)のレセルピンを2回前処置したラットに情動ストレスを加えると,E群全例とNE群31%に線状GMLの発生が認められた.また,NE群の44%には点状GMLが発生していた.胃粘膜病変は腺胃部に限局しており,組織学的検索の結果,両群共に大部分のGMLは粘膜層の損傷にとどまっていたが,時として粘膜筋板断裂の例も認められた.直径3mmの細径ファイバースコープを用いることにより,粘膜損傷の形状を明確に識別でき,同一個体の病態像の経時的変化を追跡できた.GMLの治癒は早く,E群とNE群共に24時間後には周囲組織の隆起が認められ,36時間後には縮小傾向,60時間後には搬痕となっていた.幹迷走神経切離術を施した群では,E群とNE群共に情動ストレス負荷によるGMLの発生が完全に抑制された.幽門形成術のみを施した偽手術群では,このような抑制効果は認められなかった.実験心身症の観点から考案されたコミュニケーションボックス法と内視鏡観察を組み合わせることにより,臨床医学の立場により近いアプローチが可能と考える.
著者
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