腎虚血による急性腎障害に対するAdenosine triphosphate-Magnesium chloride(ATP-MgCl<SUB>2</SUB>)投与の効果(第一報)
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概要
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虚血によって誘起したラットの急性腎障害モデルを作製し,このモデルにおける腎機能および腎細胞内代謝の変化と,adenosine triphosphate-magnesium chlodde(ATP-MgCl<SUB>2</SUB>)投与における効果について腎機能面から検討した.その結果1)腎虚血を40分間以上することにより,腎血流再開90分後の腎細胞内ATPレベルおよびエネルギーチャージ(EC)は非虚血群に比しそれぞれ45〜57%,4.1〜7.4%有意に低下した.また腎組織中Na<SUP>+</SUP>は有意に増加したが,K<SUP>+</SUP>は低下傾向を認めたものの有意差は認められなかった.さらに腎組織中乳酸濃度は虚血時間の延長とともに非虚血群に比し27〜31%の増加傾向を示し,腎細胞内の嫌気的代謝が認められた.一方,腎血流再開24時間後の血漿クレアチニン(P-Cr),血中尿素窒素(BUN)およびナトリウム排泄率(FENa)は非虚血群に比しそれぞれ有意に増加し,さらにクレアチニンクリアランス(C-Cr),尿浸透圧は有意に低下し,虚血性腎障害に陥っていることが認められた.2)40分の腎虚血後にATP-MgCl<SUB>2</SUB>を,投与量25μmole/kg,投与速度1.0μmole/minで静脈内投与することにより,腎血流再開24時間後のP-Cr,BUNおよびFENaは対照(生理食塩液投与)に比しそれぞれ36,35および35%有意に低下し,さらにC-Crおよび尿浸透圧はおのおの41%および31%有意に上昇した.以上の結果から,ラットの虚血性急性腎障害は虚血によって腎細胞内ATPおよびECが減少し,細胞内代謝障害を生じることによって発症するものと考えられた.さらに,かかる病態に対しATP-MgCl<SUB>2</SUB>を投与することにより,腎機能が有意に改善されることが示唆された.
著者
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田中 修一
扶桑薬品工業株式会社 研究開発センター
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川添 祥一
扶桑薬品工業株式会社研究開発センター
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白石 美津子
扶桑薬品工業株式会社研究開発センター
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旭 哲也
扶桑薬品工業株式会社研究開発センター
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清水 一広
扶桑薬品工業 研開セ
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半田 武
扶桑薬品工業株式会社研究開発センター
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荒尾 宣一郎
扶桑薬品工業株式会社研究開発センター
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中沢 照喜
扶桑薬品工業株式会社研究開発センター
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旭 哲也
扶桑薬品工業K. K.研究所
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清水 一広
扶桑薬品工業株式会社研究開発センター
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