脳内SerotoninとCatecholaminesの相互作用に関する研究
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概要
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dopamine(DA)あるいはserotonin(5-HT)を脳内で増量させる目的で,その前駆物質であるL-3,4-dihydroxyphcnylalanine(L-dopa)あるいは5-hydroxytryptophan(5-HTP)を投与する事は,しばしば行なわれている.この場合,本来その伝達物質を含有する細胞でこの増量が期待される.しかし,L-dopaからDAを,または,5-HTPから5-HTを生合成する酵素(aromatic L-amino acid decarboxylase,AAAD)は脳内において少なくとも4つの異なった細胞(DA,5-HTならびにnorepinephrine含有神経細胞,および毛細血管周囲細胞)に存在することが知られている。ラットに,Ldopaあるいは5-HTPを腹腔内投与後,生合成きれたDAあるいは5-HTが,脳のどの部位に存在するかを検討した.1)L-dopa投与により脳内DA量が6倍以上に増加すると5-HT量の有意な減少と5-hydroxyindoleacetic acid量の有意な増加が認められた.しかし,DA量の増加を6倍以下に抑えれば5-HT neuronに影響を与えなかった.2)神経終末分画においてL-dopa投与後DA量の増加は線条体で最大であった.一方,5-HTP投与後,5-HT量の増加は視床下部で最大であった.このことはL-dopaあるいは5-HTP投与後のDAあるいは5-HT量の増加の分布は,AAAD活牲の分布で決定されない事を示している.即ち,L-dopaあるいは5-HTPの神経細胞への取込み,または,生成されたもしくは5-HTのシナプス小胞への取込みなどの選択性も増加の分布に関与する事を支持している.3)5,7-dihydroxytryptamine(5,7-DHT)で選択的に5-HT neuronを変性きせたラットに,大量の5-HTPを投与すると,生成5-HT量の増加は線条体で最大であった.これは,神経細胞あるいはシナプス小胞への取込みの選択性に限界があることを示唆している.以上の結果から,L-dopaあるいは5-HTPを腹腔内投与後,生合成されたDAあるいは5-HTが,それらのneuronの存在する部位において増加するか否かは1)L-dopaあるいは5-HTPの投与量,ならびに2)DAあるいは5-HT neuronが変性されないで,どれだけ正常状態で存在するか,などの要因により決定される事が示唆された.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
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