ラット脳神経終末におけるATP依存性H<SUP>+</SUP>輸送活性の性質について
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概要
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ラット脳の神経終末形質膜におけるATP依存性のH<SUP>+</SUP>輸送をacridine orangeの蛍光減弱により検索した.ATP添加後の膜顆粒内H<SUP>+</SUP>蓄積を示す蛍光減弱は,低張処理した神経終末では観察されたが,無処理の神経終末では観察されなかった.低張処理した神経終末のH<SUP>+</SUP>輸送活性は反応液のアニオンがCl<SUP>-</SUP>かBr<SUP>-</SUP>の場合にのみ観察され,Mes<SUP>-</SUP>,NO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>,I<SUP>-</SUP>およびSCN<SUP>-</SUP>では消失した.反応液のK<SUP>+</SUP>をCs<SUP>+</SUP>,Na<SUP>+</SUP>またはLi<SUP>+</SUP>に置き換えると,K<SUP>+</SUP>>Gs<SUP>+</SUP>>Na<SUP>+</SUP>>Li<SUP>+</SUP>の順にH<SUP>+</SUP>輸送活性は減少した.このH<SUP>+</SUP>輸送活性は,0.3 mM ethacrynic acidでは対照の39.2%に,10μM 4-acetamide-4′-isothiocyanatostilbene-2,2′-disulfonic acidでは36.3%に,また1 mM 4-aminopyridineでは33.1%にまで阻害されたが,1 mM ouabain,500 μM vanadate, 10 μM picrotoxinおよび100 μMγ-aminobutyric acidでは阻害されなかった.これらの結果から,神経終末において,ATP依存性H<SUP>+</SUP>輸送系のATP作用部位は細胞内側表面に存在し,Cl<SUP>-</SUP>またはBr<SUP>-</SUP>の存在,およびK<SUP>+</SUP>のK<SUP>+</SUP>チャンネルを介する移動が,H<SUP>+</SUP>輸送活性を高めることが示唆された.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
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稲垣 千代子
京都薬科大学生物学教室
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宮越 順二
京都大学医学部放射線遺伝子学教室
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小田 和佐子
京都薬科大学生物学教室
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福永 玲子
京都薬科大学生物学教室
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市川 悦子
京都薬科大学生物学教室
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功刀 由紀子
京都薬科大学生物学教室
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宮越 順二
京都大学医学部RI学生実習室研究室
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宮越 順二
京都大学医学部
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