SART stress負荷ラットにおける血圧・血流の異常とそれに及ぼすNeurotropinその他の薬物作用
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概要
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SART stressラット胃体部漿膜下の2ケ所に20%酢酸をおのおの0.05mlずつ注入することにより,重症の潰瘍を惹起させ,潰瘍領域のmucosaおよびstroma中のhexosamine,sialic acid,uronic acidおよびhydroxyproline含量に対するaceglutamide aluminumの効果をL-glutamineの効果と比較検討した.aceglutamide aluminum(1000mg/kg×2/day)を手術の日から4日目までp.o.投与し5日目に薬効を評価した時,この薬物は潰瘍指数を18%,潰瘍部穿孔を66%抑制した.また潰瘍領域のmucosa中のhexosamine,sialic acidおよびuronic acidの総含量(μg/潰瘍領域/ラット)を著明に増加させ,特にsialic acidにおいてはその濃度(μg/100mg乾燥組織)も有意に増加させた.一方stromaではhydroxyprolineを含めてこれら組織構成成分含量はこの薬物によってほとんど影響を受けなかった.aceglutamidealuminum(1000mg/kg×2/day)を手術の日から14日目までp.o.投与し15日目に評価した場合,4日間投与の場合に比べてより著明な効果を示し,潰瘍指数を37%,そして潰瘍部穿孔を完全に抑制した.またmucosa中のhexosamine,sialic acidおよびuronic acid濃度および総含量を著明に増加させ,特にsialic acid含量を最も強く増加させた.さらにこの薬物はmucosaの場合よりは軽度であるが,stromaにおいてhexosamine,sialic acidおよびuronic acidの濃度および総含量,hydroxyprolineの総含量を有意に増加させた.aceglutamide aluminumの以上の効果はL-glutamineよりもはるかに強力であった.以上の結果から,この薬物は潰瘍領域において粘液および肉芽組織構成成分を増加させ,防御因子を増強することにより潰瘍治癒を促進するものと思われる.SART stressラットの循環系における機能状態を調べる目的で,循環系の生理的指標である血圧と局所動脈の血流量を調べた.またこれらの変化に及ぼす神経鎮静薬neurotropin(以下NSP)および降圧剤等の効果を調べた.SART stressラットの収縮期血圧(以下血圧)を経日的に測定すると,stress負荷開始当日では一過性の血圧上昇が認められた.その後4日目より有意な血圧下降が観察され,6日目以降はnon-stress群に比べ約10mmHg低い値となり,この血圧下降は数日間持続した.次いでSART stressを5日間負荷したラットの血流量を測定すると,総頸動脈における平均血流量の減少,上腸間膜動脈における平均および瞬時の最大血流量の増加および腹大動脈における瞬時最大血流量の増加傾向が認められた.腎動脈および大腿動脈の血流量にはnon-stress群との間に有意差は見られなかった.またこの時の血流波形から,総頸動脈や腹大動脈では血管壁の硬化が,上腸間膜動脈では血管拡張および血管壁の軟化が示唆された.次にSART stress動物の低血圧に対する薬物の効果を調べたところ,1回投与による急性効果ではNSPは無影響で,降圧剤であるguanethidine,clonidineおよびhydralazineではいずれもSART stressで低下した血圧をさらに下降させた.次にこれらの薬物をSART stress負荷開始当日より連日投与しておくと,NSP投与群では血圧低下度が対照群に比べて小となり血圧下降阻止効果が認められた.またNSPの連日投与により総頸動脈ならびに上腸間膜動脈における血流量の変化は阻止されいずれも正常値に近い値となった.
著者
-
小田 泰雄
近畿大学薬学部
-
伊藤 栄次
近畿大学薬学部
-
秦 多恵子
近畿大学薬学部
-
浪松 昭夫
近畿大学薬学部薬理学
-
秦 多恵子
近畿大・薬・薬理
-
喜多 富太郎
近畿大学薬学部
-
小田 泰雄
近畿大学薬学部生物化学教室
-
伊藤 栄次
近畿大学薬学部薬理学教室
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