ラットの遅延放射状迷路課題の遂行に及ぼすScopolamineの効果
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概要
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ムスカリン性抗コリン薬であるscopolamine(SCP)によって誘発した行動異常は,動物の記憶障害モデルに通じると考えられ,脳機能改善薬を検索するための前臨床試験法の一つとして現在も幅広く利用されている.本研究では,SCP効果の性質を分析するために,Wistar-Imamichi系雄ラットで,8選択肢放射状迷路を用い,記憶に関連すると考えられる行動変化について検討した.課題は8本のアームの先端に置かれた餌をラットが全部採取することからなるが,ラットが初あの4選択を終えた時点でホームケージに戻し,ある遅延時間が経過した後に残りの餌取りを行なわせて,遅延前に選択したアームを再選択した時を誤選択として記憶現象を測定した.実験1では,最初の4選択と残りの選択との間に,1,2,4および6時間の遅延時間を挿入し,scP(0.5mg/kg,i.p.)を最初の4選択が終わった直後に投与した.SCPは遅延後の正選択数を減少させたが,遅延時間の長さによってその程度には変化は見出されなかった.実験2では,遅延時間を4時間に固定し,最初の4選択から薬物投与までの時間を0,1および2時間とした.実験1と同様,SCPは正選択数を減少させたが,薬物投与時間を変えたことによる影響はみられなかった.このように,SCPの効果には実験操作に対する時間依存性が少なく,記憶の固定や保持といった過程に対する逆向性の影響よりは,情報の獲得といった過程への順向性の障害を引き起している可能性が示唆された.
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