低分子量ヘパリン(LHG)の薬理学的研究
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概要
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低分子量ヘパリン(LHG)の血液凝固系,出血時間,脂質系,血小板凝集及び骨代謝に及ぼす影響を,ヘパリンナトリウム(ヘパリン)と比較した.in vitroにおいてLHGは,イヌ血漿の活性部分トロンボプラスチン時間(APTT),プロトロンビン時間(PT)及びトロンビン時間(TT)を延長させたが,それらの延長はヘパリンに比して有意に軽度であり,LHG8μg/mlとヘパリン2μg/mlによる延長はほぼ同等であった.ラットにL,HGを静脈内投与したときのAPTTの延長は,ヘパリン投与時に比して有意に軽度であった.LHGはトロンビン静注致死ラットモデルの死亡率を低下させたが,その作用はヘパリンに比して有意に弱く,LHGの効果は1/4の用量のヘパリンとほぼ同等であった.さらに,LHGによるラット尾動脈出血時間の延長は,ヘパリンに比して有意に軽度であり,LHGの影響は1/4の用量のヘパリンとほぼ同等であった.これらのことから,出血時間の延長は主として抗トロンビン作用によるものであり,LHGはヘパリンに比して抗トロンビン作用が弱く,出血を助長させにくいと考えられた.ヘパリンはリポプロテインリパーゼを活性化し,トリグリセライドの減少及び遊離脂肪酸の増加をひき起こした.LHGの影響はヘパリンに比して軽度であったが,高用量を用いるとヘパリンと同様に強い影響を及ぼした.ヘパリンは,血小板のADP凝集を増強したが,LHGはほとんど影響しなかった.LHG及びヘパリンの骨吸収に及ぼす直接作用及び骨形成に及ぼす作用は認められなかった.LHGの抗凝固効果は同重量のヘパリンとほぼ同等であることが明らかにされていることから,LHGでは従来のヘパリンで報告されている副作用に関連する薬理作用の発現はヘパリンに比して軽度であり,より安全性の高い抗凝固薬であると考えられた.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
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