コラゲナーゼ灌流によるラット肝小葉内門脈枝周辺ならびに中心静脈周辺肝実質細胞の選択的分離法
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概要
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ラット肝臓の小葉内門脈枝周辺あるいは中心静脈周辺肝実質細胞を選択的に分離するための2つのコラゲナーゼ灌流法を試みた.(1)二方向灌流法と一方向灌流法の2っの灌流法について,それぞれ門脈枝周辺あるいは中心静脈周辺肝実質細胞を選択的に得るためのコラゲナーゼの濃度,灌流速度ならびに灌流時間を検討した.最適条件下の二方向灌流法あるいは一方向灌流法によって得られた肝細胞浮遊液を低速遠心操作を行うことによって混在する非実質細胞を除くことができ,次いで,Percoll密度勾配遠心操作を行うことにより,生細胞存在率を高めることができた.2つの灌流法について細胞収量と生細胞存在率を比較した結果,一方向灌流法のほうが優れていることがわかった.(2)一方向灌流法によって分離された小葉内の2つの領域の肝実質細胞について,以下のことを検討した.(i)グルタミン酸脱炭酸酵素活性およびチトクロムP450量は,中心静脈周辺肝実質細胞のほうが門脈枝周辺肝実質細胞のそれらよりも有意に高く,アラニンアミノ基転位酵素活性は,門脈枝周辺肝実質細胞のほうが有意に高かった.これらの結果は組織化学的研究による結果と一致した.(ii)グルカゴンのゲルカゴン受容体への結合数ならびに受容体活性化後の細胞内cAMP蓄積量は,外液中グルカゴン濃度に依存して増加した.(iii)得られた肝実質細胞のほとんどにおいて,細胞表面の形態,細胞膜および細胞内微細構造は正常であるとみなされた.以上のことから,著者らの試みた一方向コラゲナーゼ灌流分離法は,正常な機能および構造を保持したラット肝実質細胞を,肝小葉内の異なる領域より選択的に分離するのに適した方法であると結論した.
- 社団法人 日本薬理学会の論文