絶食ラットの腎機能に関する研究:クリアランス実験とヘンレループ微小灌流実験
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概要
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ラットにおいて, 18〜24時間の絶食によりNa利尿を起こすこと,またこの際遠位尿細管の浸透圧およびNa濃度が上昇することを前回の実験で指摘した.今回の実験は,遠位尿細管尿の浸透圧およびNa濃度に影響するかもしれないヘンレループでの水およびureaの動きが絶食によって変化するか否かを確めるためにおこなった.日本クレア製CE-2で飼育した雌性Wistar系ラットを用い,非絶食,18〜24時間絶食および4〜5日絶食の3条件下で実験をおこなった.絶食中も水は自由に給与した. Nembutalで麻酔し,クリアランスおよびヘンレループの微小潅流実験のための外科的手術の終了後, 5% inulin 0.4mlを静注,続いて2% inulinを含む2%食塩水を33.3μl/minの速度で持続注入した. 60分後よりクリアランス実験を行ない,適時ヘンレループの微小潅流実験も行なった.潅流液として, 0.05% lissamine green, 3H-methoxyinulinおよび14C-ureaを含む1%食塩水を用い,潅流速度は29.1nl/minとした. 18〜24時間絶食ラットでは,尿量およびNa排泄量は高く, urea排泄量は低かった.イヌリンクリアランスは低下傾向を示した.一方,血漿に対する遠位尿細管尿の浸透圧比は上昇したが,ループでの水の吸収は不変であった.また,ループを潅流した14C-ureaの遠位尿細管での回収率は絶食により増加したので, ureaに対するループの透過性低下による遠位尿細管尿のurea濃度の上昇が推定されたが,浸透圧的に大きな比重を占めるものではなかった.以上の結果はラットの絶食により生ずるNa利尿の一部がヘンレループでの,恐らくループ上行脚でのNa再吸収の抑制によるとした前回の推定をさらに強く支持するものと考える.4〜5日絶食ラットでの各種腎機能の変化は18〜24時間絶食ラットにみられた変化よりさらに顕著であった.これはヒトおよび家兎での絶食にみられるNa利尿の経時的変化にも符含していることを示す.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
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