ミオシン軽鎖キナーゼをノックアウトした血管平滑筋株
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概要
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ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)はCa<SUP>2+</SUP>とカルモジュリン存在下で、平滑筋ミオシン軽鎖をリン酸化し、そのATPaseを活性化する酵素である。MLCKは多機能性で、アクチン結合性やミオシン結合性が古くから知られていたが、これらの性質が、アクチン−ミオシン相互作用を修飾し得ることが演者らの手により解明されて来た。特に、MLCKミオシン結合性のAla796 - Ser815の配列が平滑筋ミオシンATPaseを非リン酸化のままで活性化する(Ye et al. Proc. Natl. Aca. Sci. USA 96 666-6671, 1999)事に興味をもち、この生理的意義を知る目的で平滑筋細胞内でMLCKの発現の阻害を行なった。母体には血管平滑筋由来のSM3(Sasaki et al. J. Biochem. 106 1009-1018, 1989)を用い、プラスミドベクターによりMLCKのcDNAの一部をアンチセンス方向でSM3細胞に導入し、MLCK・mRNAのアンチセンスを細胞内で発現させた。薬剤耐性を目安にスクリーニングをし、これによりMCLK・欠損株をstable transfectantとして得ることができた。この欠損株の顕著な性質は、細胞運動能が減少している事であった。SM3は血小板由来成長因子(PDGF)によりmembrane ruffling(MR)を伴う細胞運動を示すが、欠損株ではこれが見られなかった。この観察はMLCKが細胞運動に必須である事を証明するものであるが、MLCKの多機能のうち、どの機能が関与しているかは明らかでない。そこで、controlのSM3細胞に、MLCKのキナーゼ活性阻害薬(ML-9)を与え、MRの発生を調べた。ML-9の有無にかかわらずMRが観察されたが、これはMLCKのキナーゼ活性は細胞運動に関与していないことをいみし、リン酸化を経由しないミオシン活性化の機能が働いている可能性が認められた。平滑筋の収縮であるか、これは培養下では困難が多いが、MLCK欠損株における結果についても言及する。