牛乳固有のプロティナーゼによる脱脂乳中のラクトフォリンの分解
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ラクトフォリン(LP)は,乳脂肪球皮膜(MFGM)の再溶性糖タンパク質の抗体と反応し,かつホエーのプロテオースペプトン画分(PP)のコンポネントー3画分の主要な糖タンパク質に付けられた名称である.本研究では,LPが牛乳固有のプロティナーゼによって,他のPP画分と同様に,脱脂乳(SKM)の高分子タンパク質から生成されるかを試験した.37°Cで14日間インキュベートした後のSKM (Uh-SKM)を95°Cで30分間加熱し,全PP画分を調製し,これを硫安塩析によってコンポネント-3,-5,-8画分とに分画した.対照には予め95°Cで30分間加熱したSKM (H-SKM)をインキュベートし,同様に処理した.H-SKMに比して, Uh-SKMからの全PPおよび各コンポネントの収量,LPの電気泳動的性質,免疫電気泳動的性質に顕著な差異が認められた.すなわち,H-SKMから調製した全PPおよびコンポネント-5と-8の収量はインキュベーション期間中に変らなかったのに対して,Uh-SKMからのそれらは時間の経過と共に増大した.しかしUh-SKMのLPに富むコンポネントー3画分の増加は初めの1週間にわずかに増加し,その後はほぼ一定であった.Uh-SKMのコンポネント-3画分のLPは,6日目で中間体を形成しつつ,消失するにとが電気泳動で認められた.コンポネント-3画分中のLPの抗原性は, H-SKMではほとんど変らなかったのに対して, Uh-SKMの場合には,インキュベ-ション時間の経過と共に次第に減少し,14日目には0日のそれの20%に減少していることが単一放射免疫拡散法で確認された.さらにに免疫電気泳動では,対照のLPは2本の沈降線を示すのに対して,Uh-SKMのLPは2〜3日で移動度がやや減少し,4日目には1本になり,6日目にはより短い1本の沈降線となったが,14日目でも消失することはなかった.このことは,単一放射免疫拡散分析での結果とも一致して,LPは抗原性を保持しながら中間体を経て分解されることを示している.本研究の結果は,牛乳固有のプロティナーゼにより,β-カゼイン由来のPP画分は増加するが, LPは他の高分子タンパク質の蛋白分解によって生成されるどころか,分解されることが明らかとなった.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
著者
関連論文
- 国立大学法人"大学"の行く末は
- 病原微生物に対する分泌型lgA抗体の産生とその利用
- 牛乳のラクトフォリン:その発見,特性および機能
- プラスミンおよびトリプシンによる牛乳のラクトフォリンの蛋白分解
- 牛乳固有のプロティナーゼによる脱脂乳中のラクトフォリンの分解