牛卵巣の輸送温度が体外成熟•体外受精卵子の胚発生へ及ぼす影響
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概要
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食肉処理場からの卵巣輸送温度が,完全体外培養系による体外受精での卵割率および胚盤胞への発生率に及ぼす影響について調べた.卵巣の輸送温度は,4°C区,10°C区および20°C区の3区とし,それぞれの区に38°Cの対照区を設定し,生理食塩水を満たした容器で輸送した.輸送した卵巣から卵胞卵子を採取し,緊密に卵丘細胞が付着した卵子のみを選抜し,20〜22時間の成熟培養の後,ヘパリン処理精子で媒精した.卵巣採取から卵胞卵子の吸引採取までに要した時間は,2〜4時間であった.卵割検査は媒精72時間後に行ない,2〜16細胞に分割した初期胚は以後3〜7日間発生培養した.2細胞以上への卵割率は,20°C区(74.3%,409/550)と対照区(68.7%,368/536)との間に差はなかったが,4°C区(12.1%,103/851)および10°C区(16.3%,69/423)では対照区(66.1%,530/802および74.5%,266/357)に比較し有意に低下した(P<0.01).同様に,媒精後7〜11日目の胚盤胞への発生率においても,20°C区(16.2%,89/550)と対照区(14.5%,78/536)との間には差はなかったが,4°C区(0.9%,8/851)および10°C区(2.0%,8/423)とそれぞれの対照区(15.7%,126/802および21.6%,77/357)の間には有意な差(P<0.01)が認められた.以上のことから,20°Cでの卵巣輸送は,少なくとも4時間までは胚発生に悪影響を与えないが,10°Cおよび4°Cでの輸送は,胚発生率を明らかに低下させることが判った.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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