黒毛和種育成牛の気質に及ぼす生後数日間の牛舎内収容およびヒトの存在の影響
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概要
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初期における牛舎内収容あるいはヒトの存在の経験が肉用牛の気質に及ぼす影響を明らかにするために,黒毛和種20頭を供試して,離乳前から育成終了時にかけて測定した気質と生後7日間における牛舎内収容期間および管理者や観察者との同居時間との関係を検討した.出生時の飼育場所は牛舎あるいは放牧地とし,子牛を放牧地に出すまでの日数によって,0日区(n=7),1日区(n=4),3日区(n=4)および7日区(n=5)とした.ヒトとの同居時間は,生後7日間に飼育管理あるいは別の行動観察のためにヒトが供試牛と同じ牛舎内あるいは牧区内にいた時間を記録した.気質の評価は,捕獲の難易度を5段階とした捕獲スコア(1:極容易〜5:極困難)を用い,離乳前(平均81日齢),離乳時(平均101日齢)および育成終了時(平均264日齢)に行った.捕獲スコアに性差は認められず,スコアと体重および日増体量との相関関係は認められなかった.日齢が進むとスコアは低下し捕獲が容易になったが,各個体のスコアは離乳前と育成終了時とで本質的には変化せず,離乳前に決まった気質は固定的であった.処理間では,育成終了時の捕獲スコアは3日区が1日区よりも有意に低く,7日区は3日区に近い値であったことから,生後2〜3日における牛舎内収容が気質に影響を及ぼした可能性が示された.一方,0日区の捕獲スコアはスケールの全域に分布し,牛舎に入れないことが単純に家畜の扱いにくさに反映するわけではないことも示された.生後2〜3日のヒトとの同居時間と平均捕獲スコアとの間には,実質的な負の相関関係が認められたが,生後1日および4〜7日には関係が認められなかった.これらの結果は,出生後の早い時期にヒトと接することが,その後の黒毛和種の管理者に対する反応を緩和させることを示している.特に生後2〜3日間が子牛の外部刺激に対する学習や記憶に関わる感受期である可能性が示唆された.
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