乳児胃内の蛋白分解酵素に関する研究 : II. 電気泳動法による蛋白分解酵素の検索
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概要
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乳児の胃内で蛋白質の消化に関与する酵素の検索を,〓紙電気泳動法によつて行なつた.すなわち,ペプシンの等電点に近いpH2.5付近で電気泳動を行なうと,乳児の胃液は,〓紙上の原点近くに,分解力が強い1つの区分を示すのみである.これとレンネットとを混合泳動すると,レンニンの存在を示す2つの区分と,乳児の胃内の酵素区分との合計3つの区分が出現する.そこでこの3つの区分は,同一の性質のものではないことがわかつた.一方,pH4.6で,馬およびメン羊の胃のペプシンを豚のペプシンと同時に電気泳動すると,その結果は完全に一致する.しかし乳児の胃液の場合は,豚のペプシンと一致することもあり,またこれとは別の場所に,別の区分を形成することもあつた.ペプシンの等電点のpHでは泳動しにくいこと,および牛乳凝固力が弱くて蛋白分解力が強いことから,乳児の胃内の蛋白分解酵素は,ペプシンを主体とするものと考えられた.これにレンニンが混在することは,ほとんど考えられない.しかも乳児のペプシンは,豚のペプシンと性質がやや異なることが,電気泳動的にも認められた.また乳児の胃抽出液では,電気泳動的には,カテプシン区分の分離が認められなかつた.カテプシン区分の出現は,ペプシン酵素の不均一性に由来するものではないかと考えられる.