乳児胃内の蛋白分解酵素に関する研究 : I. 乳児の胃内におけるレンニン存否の検討
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概要
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乳児の胃液および胃の抽出液を用い,胃内にレンニンが分泌されているかどうかを検討し,さらにカテプシンの作用の性質について研究した.1. 牛乳凝固時のpHと酵素の凝固力の関係をしらべたところ,レンニンのほうが,ペプシンよりアルカリ性の側で凝固力を保持することがわかつた.しかし,同一酵素の各試料間のバラツキが大きいため,酵素の鑑別法としてこの関係を用いることは,不適当である.2. 凝固阻害剤を用いて,ペプシンとレンニンを鑑別する方法について考えた.アセトンでは,両者の阻害度に差が少なく,血清では,一般にペプシンのほうがレンニンより強く阻害された.しかし実験結果の再現性が低いので,有効な方法は得られなかつた.3. 牛乳凝固力と蛋白分解力について比較するとペプシンのほうが明らかに蛋白分解力が強かつた.胃液は,レンニンとちがつて,ペプシンと同等,またはそれより強い分解力を示した.従つて乳児の胃内では,ペプシン(カテプシンが存在するとすれば,カテプシンも含めて)が,消化作用の主体をなすものと考えられる.4. pHを変えた場合の基質の分解度の変化を曲線に描いてみると,胃液には,レンニンの作用を示す峰の存在が認められなかつた.カテプシン作用峰は認められたが,その存在はまだ確認できない.乳児のペプシンの作用pH域は,豚のペプシンより広かつた.馬および羊のペプシンは,豚のペプシンと似た分解曲線を示した