ラツト未受精卵子の分割特にその細胞学的觀察
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概要
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ラットの未受精卵子の分割について,細胞学的に一連の観察を行ない次の結果を得た。1. 同一個体で,左右の卵管から,時間を異にして卵子を採取するを,分割卵子は排卵後24時間(左卵管)では14.7%(34個のうち5個)で,5細胞期までであり,排卵後30時間(右卵管)では58.1%(31個のうち18個)で最高7細胞期に達している。なお,1細胞期の卵子で,排卵後24時間では11個の卵子に,30時間では1個の卵子に,極体様細胞の形成が認められた。2. 切片法による観察:排卵後24-30時間では第2成熟分裂中期の状態がつづき,排卵後24-42時間では染色体の分散した卵子がみられた。排卵後24時間以降において,多核の卵子や分割卵子がみられた。分割の際の紡錘糸は認められなかつた。3. 位相差顕微鏡およびスライド染色法による観察:排卵後30時間に採取した卵子143個のうち,分割していない卵子は76個(53%)で,これらは第2成熟分裂中期(7個),染色体の分散(49個),多核など,種々の状態にあつた。残りの67個(47%)は分割卵子で,最高10(多くは2〜5)細胞期まで認められた。そのうち11個(16.4%)はpseudo-normal ovumであつた。分割卵子のすべての分割球は核を有するように観察された。4. ラット19匹に,プロゲステロン5mgの単独,またはエストラダイオールlγとの併用注射を行なつて,未受精卵子の7床を試みたが,成功しなかつた。5. ラット15匹の卵巣を切片法によつて観察した。異常卵子138個のうち,11個では染色体が分散し,27個は多核卵子で,100個は分割していた。1細胞期の卵子のうち,極体1個をもつものは8個,極体2個をもつものは5個であつた。6. 以上の観察から,ラットの未受精卵子の分割は,退化の過程において,直接分割(immediate cleavage)によつておこるものであることを知つた。なお,単為発生卵子は存在しないであろうと考えられた。
- 社団法人 日本畜産学会の論文