カマンベールチーズの微生物に関する研究 : IV. カマンベールチーズの熟成におよぼす食塩の影響について
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概要
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1. 食塩により微生物の生育を制御したカマンベールチーズを試作し,その熟成期間における化学的変化,特に乳蛋白の分解過程を観察した.2. pH4.4酸可溶性窒素化合物(AN)は食塩濃度の低いチーズに多く,以下食塩濃度が高くなるに従い少なくなった.12% T. C. A.可溶性窒素化合物(NPN)は食塩濃度による差は少なく,無添加,2%および3%添加ではほぼ同程度であった.更に低分子のチロシンはANと同様,食塩濃度の低いものに多く認められた.3. チーズの部位により,表面にのみ生育するかびおよび細菌相が異なることから,各形態窒素化合物の分布に相違が認められた.食塩濃度の低いチーズの表層部にANが多く,中心部との差も大きい.食塩濃度が高くなるにつれて部位による差が少なくなり,4%添加ではほとんど差は認められなかった.NPNはいずれの食塩濃度においても,中心部と表層部の差は少なく,更に低分子のチロシンは食塩濃度による差は明確であるが,無添加を除く,いずれの食塩濃度においても表層部と中心部の差が少なかった.4. 微生物相の変遷の結果と比較検討すると,カマンベールチーズの蛋白分解過程は以下のごとくに進行することが推定された.すなわち,乳蛋白はかびによりANに分解され,さらに乳酸菌の蛋白分解作用が加わり,低分子の窒素化合物に分解されていくものと考えられる.また,チーズ微生物相において,乳酸菌スターター由来のStr. lactisおよびStr. cremorisが多く占めるチーズほど,低分子の窒素化合物の生成量が多いことが認められた.
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