人工第一胃におけるガス産生像とその飼料価値評価への応用に関する研究 : I. ガス産生像の基質による特異性
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概要
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人工第1胃醗酵槽内に産生されるガス産生像について,その飼料価値評価法への応用の可能性を知るため,ガス産生速度およびその経時的変化(ガス産生曲線)の面からの一連の検討を意図し,とくに重炭酸塩緩衝の人工唾液を用いた系でのガス産生像を基質による特異性と,実験方法としてのその定常性の観点から検討を加えた.1) 同一実験内での同一基質を供した醗酵槽間のガス産生速度の変動係数は,供試の実験条件下においてガス測定時点,基質,あるいは供試第1胃液の差異に関係なく非常に小さかった.供試醗酵槽の処理間差は1処理2醗酵槽の供試でも十分検討できるものと考えられた.2) 第1胃微生物叢の採取日を異にした実験において,培養1時間後より2時間にわたって10ml目盛注射器による20分間隔で測定した供試基質のガス産生速度の平均値(ml/20min)は各基質に固有な程度に異なったが,その固有性は実験日あるいは季節の違いにより影響されず,ガス産生速度の基質による特異性が明らかにされた.3) 各種配合飼料原料のガス産生曲線は20分間隔および60分間隔のいずれの測定によってもそれぞれ基質特異的なガス産生速度に応じて異なった,連続的に増減するスムーズな変化像を示し,その曲線像の基質による特異性が示唆された.また,累積ガス量が同じである基質においてその曲線像が異なる事実のあることが認められた.4) 成分の違いがよく知られており,ガス産生曲線がその10時間培養時間内で対称的であったとうもろこしと大豆粕との混合割合の違いと曲線像の変動との関係を検討したところ,それらの混合割合に応じて曲線像が有意に(P<0.001)変動することを認めた.これよりガス産生曲線の変動が基質特異的であることを確認した.
- 社団法人 日本畜産学会の論文