高温時の牛乳の脂肪酸組成
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概要
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牛乳の脂肪酸組成におよぼす高温環境下での飼養の影響を明らかにするため,人工気候室と野外でそれぞれ4頭および6頭のホルスタイン種乳牛を用いて実験を行なった.人工気候室では実験牛を18°Cと30°Cに曝露し,野外試験は,平均最高気温が19.4°Cの3月下旬と4月,32.7°Cの7月下旬と8月の2回舎飼の乳牛で実施した.両実験とも乳脂肪中に27個以上の脂肪酸を検出することが出来たが,そのうち最も顕著な脂肪酸は,パルミチン酸(C 16:0)とオレイン酸(C 18:1)であり,これら二つの脂肪酸は全脂肪酸の52%以上を占めた.牛乳の脂肪酸組成に与える高温の影響は,人工気候室と野外では異なり,例えば,野外では春期に比べ夏期にC 16:0は4.86%増加し,C 18:1は6.72%減少(P〈0.01)したが,人工気候室では,C 16:0とC 18:1は18°Cに比べ30°Cにおいてそれぞれ1.61および2.18%増加するのが認められた.しかしこれらの増加は有意ではなかった.すなわち,牛乳の脂肪酸組成に与える高温の影響は,人工気候室と野外との間で一致しなかった.自然条件下では給与飼料が季節により異なるが,牛乳の脂肪酸組成に与える高温の影響は温度よりも給与飼料の方が大きいので,単一の給与飼料を与えて高温の影響をみた人工気候室の結果からのみでは,自然条件下での牛乳の脂肪酸組成の変化は予測できないと思われた.さらに気化冷却が牛乳の脂肪酸組成に与える影響を調査したが,その影響はほとんど無視出来る程度であった.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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