体外培養による豚卵母細胞-卵丘細胞複合体の成熟誘起について
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概要
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未成熟豚の卵巣から採取した卵丘細胞層に包まれた卵母細胞を種々の培地内で培養し,成熟誘起を試みた.基礎培地で培養された卵母細胞では148個中123個(83.1%)に卵核胞の崩壊が起り,94個(63.5%)が第2成熟分裂中期(Met. II)に達していた.基礎培地に10 I.U./mlのPMSGまたはhCGを添加した区では,それぞれ53.7%(36/67)および76.5%(26/34)がMet. IIに達した.一方,1%または5%牛胎児血清(FCS)添加区では,それぞれ70.8%および90.6%が卵核胞期にとどまっていた.卵丘細胞層の膨化は基礎培地にFCSまたは性腺刺激ホルモンのいずれか一方を添加しても起らなかったが,1% FCSとPMSGまたはhCGが共存する培地では,それぞれ89.1%および86.0%で卵丘細胞層の膨化が認められた.同時に,78.8%および67.5%がMet. IIに達していた.5% FCSとPMSGまたはhCGの組み合せでは,卵丘細胞層の膨化がそれぞれ89.5%および62.2%認められたが,Met. IIに達した割合はそれぞれ48.3%および28.9%であった.FCSの代りに,FCSの限外濾過分画(分子量10,000以下)を用いた区においてもほぼ同様の傾向が認められた.これらのことから,1)基礎培地内では卵母細胞の成熟分裂の誘起は可能であるが,卵丘細胞層の膨化は起らないこと,2) 性腺刺激ホルモンは,卵核胞崩壊を促進する作用と卵丘細胞層の膨化を引き起す作用を有すること,および,3) FCS中には卵丘膨化作用の発現に必要な成分と卵核胞崩壊を抑制する成分が存在し,その両者の成分は分子量10,000以下であることなどが明らかにされた.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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