無角和種の乳の理化学的性状について
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概要
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和牛の乳利用に資するため,山口県産の第4産を分娩した無角和種牝牛1頭を用いて,搾乳により乳量を調査し,尚その乳を試料として脂肪率,比重,酸度,脂肪球及び化学組成等各種の理化学的性状を調査した結果を摘録すれば次の如くである。(1) 第4産を分娩した無角和種の搾乳可能期間はおよそ分娩後6カ月余で,その問の1日平均泌乳量は約7.02kgであり,1日最高乳量は約14.3kgである。これは黒毛和種及び褐毛和種よりも泌乳量は多いようである。(2) 無角和種の乳の脂肪率は平均4.47%で,大体において黒毛和種よりはやや多いようであるが,褐毛和種よりは少ない。(3) 無角和種の常乳の比重は黒毛和種のそれとほぼ同様で1.032である。(4) 酸度は常乳において0.15〜0.16%,細菌数は1cc中26〜40万であつて,黒毛和種のそれと大差ない。脂肪球の数は泌乳末期に向つて漸増して常乳では1cc中12〜37億に達し,これは黒毛和種及び褐毛和種の場合とほぼ同様である。脂肪球の大きさは黒毛和種及び褐毛和種よりも大きく,乳用種中最大といわれるジヤージー種よりもやや大で,常乳において3.3〜4.5μに達する。常乳の化学組成は全固形物,脂肪,蛋白質において黒毛和種と夫差なく,褐毛和種よりやや少なく,乳糖は黒毛和種及び褐毛和種よりも多い。灰分においては黒毛和種と大差なく,褐毛和種よりはやや多い。本邦の一般乳用種のそれに比して灰分は少ないが他の成分はすべて多い。(7) 無角和種の初乳は化学組成において分娩後40〜50時間にして常乳と殆んど差がなくなる。この時間は黒毛和種と褐毛和種のそれの中間である。(8) これを要するに,無角和種の乳質は一般乳用種のそれよりも成分的に優れ,黒毛和種及び褐毛和種のそれとほぼ同様であり,その泌乳量は両品種よりも多く,又その質も飲用に好適なので,農家が自家利用するに充分であると考えられる。擱筆するにあたり,本研究に対し御懇切なる御指導と御校閲を賜つた当畜産部長石原盛衞博士に心から感謝の意を表する。
- 社団法人 日本畜産学会の論文