腎細胞癌を合併したループス腎炎の一例
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概要
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症例は44歳女性。18歳時に全身性エリテマトーデス(SLE)と診断。28歳時にループス腎炎による急性腎不全を発症したが,寛解後は尿異常はなく,血清クレアチン値は1.0〜1.2mg/dl程度で経過していた。今回の入院1ヶ月前より下腿浮腫が出現した。尿蛋白・潜血陽性に加え血清クレアチニン値は1.7mg/dlと上昇し,ループス腎炎の再燃にて入院した。入院後の腹部超音波検査にて,左腎中極に径4cm大の多嚢胞性腫瘍を認め,腎細胞癌と診断した。プレドニゾロン 20mg/日を内服しつつ腹腔鏡下左腎摘出術を施行した。摘出腎の組織所見では,腫瘍部分はclear cell carcinoma,非腫瘍部分はループス腎炎Class IV-G(A)であった。手術後第38病日よりメチルプレドニゾロンによるパルス療法を含むステロイド治療を行い,尿異常・血清抗体価は改善し,第85病日に退院した。手術後4年を経過した現在,腎癌の再発・転移は見られていない。SLEと悪性腫瘍の合併は悪性リンパ腫,肺癌などの報告例は散見されるが,我々の検索した範囲で腎細胞癌を合併した報告はなかった。今回我々は活動性のループス腎炎に腎細胞癌を合併した一例を経験したので報告した。