マイコトキシン研究会―その方向性とリスク予知 : (学術賞)
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概要
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終戦後の食糧難時代に海外より輸入した米に肝発ガン性,腎毒性,神経毒性などを有するカビ毒を産生するカビが汚染している実態から,⌈カビ-米-カビ毒⌋の相互関連を研究機関と行政が一体となって研究し,癌原性カビ毒汚染の可能性のある黄変米を消費者に供給しない方針をたて,リスクを排除した。本研究を基盤として毒性学,菌学,化学,病理学,食品衛生学,獣医学などの多方面の研究者がカビ毒によるリスクを回避する研究・情報交換の場として1974年に本研究会が発足した.カビ毒汚染調査に川村等は諸種カビ毒に対するELISA 法を開発し,ヒトの暴露実態を実証した.研究は⌈カビ-麦-カビ毒⌋問題に進展し,Fusarium 属赤カビ汚染による中毒とその原因化合物トリテセンの同定·解析に成果を挙げ,情報を世界に発信してきた.即ち,辰野等は角田等が分離したFusarium nivale 株から新規にニバレノール(NIV)を同定し,田中等は本化合物が麦類,コーンなどを世界的規模で汚染している実態を証明し,斉藤·榎本·大坪等は造血臓器などの増殖性細胞を特異的に障害する病変を実験的に特徴ずけた.杉浦等はNIVの菌学的由来を明らかにすると共にタンク培養法を導入してNIVの多量生産に成功し,著者らは分子毒性学的手法を導入してアポトーシス誘起など細胞毒性発現機構を証明した.NIVを諸種の濃度で飼料に添加し,急性·慢性毒性,発癌·発癌促進性,免疫障害,IgA腎炎誘起,胎児毒性,薬物代謝酵素誘導などの毒性学的特性を解析し,飼料中NIVの障害誘起最小濃度(LOAEL)は成熟マウス·ラットで6 mg/kg であり,幼弱·新生児は10倍感受性が高い.摂取NIV の人への外挿にあったて,安全係数として種差×10,個人差×10に造血臓器障害,免疫障害,発ガン促進などの特殊毒性に環境由来毒性物質との相互作用などを考慮して不確定係数×10を設定すると,最終安全係数は×1,000が妥当であり,摂取NIVの安全濃度は6μg/kg と設定される.NIVなどFusarium 属菌由来のカビ毒による汚染は麦類·トーモロコシ,それらの加工食品などで世界的規模で認められており,本研究会による詳細な毒性評価とリスク排除のための積極的な提言が期待される.
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